プラスチック容器を“使い捨てない”暮らしへ。 アジア初、循環型プラットフォーム「Loop」を加速するイオン イオン イオンリテール

2022.5.27 掲載

これまで使い捨て容器で販売されていた製品をリユース可能な容器で販売し、さらに使用済み容器を回収して、洗浄・製品の再充填を行い再販する循環型の商品提供システム「Loop」。2019年にはアメリカ、フランスで試験的にスタートし、今、グローバルな展開が進んでいる。

イオンはそのプラットフォームにいち早く着目し、迅速に売り場に取り入れた。現在、日本はもちろん、アジアで「Loop」商品の取り扱いをしている小売業はイオンのみとなっている。そこで同社のLoopへの取り組みについてイオンリテール株式会社の商品戦略部長 森清智之氏にオンラインでインタビューを行った。

イオンリテール株式会社 商品戦略部長 森清智之 氏

イオンリテール株式会社 商品戦略部長 森清智之 氏

消費者が店頭で参画できるプラスチック容器のリユース

――昨年5月25日から「Loop」に参画するメーカーの商品の販売をスタートされましたが約1年たった今、お客さまの反響はいかがでしょうか。

森清:スタート当初の19店舗から現在、関東58店舗まで拡大しました。ロッテのキシリトールガムなど、毎週コンスタントに売れ、徐々にではありますが、反響は広がっています。また、様々な自治体からも「うちの地域でも実施してほしい」というご要望や「教材としても使いたいのでどの店舗で購入できるのか」といった学校からのお問い合わせもいただいています。
容器回収の仕組みの理解もスムーズに進み、都心部ではファミリー層を中心に興味を持たれるお客さまが増えています。その中で食品を増やしてほしいといったお声も寄せられ、参加いただくメーカーの拡大に、リユースモデルを提案するLoopジャパンさまとともに取り組んでいるところです。

Loop対応商品

Loop対応商品

Loop売場展開

Loop売場展開

――今まで食品トレーやペットボトルなどの店頭での資源回収を実施されてましたが、さらに「Loop」と提携したメリットはどこにあるとお考えでしょうか。

森清:イオンでは店頭で紙パック、食品トレー、アルミ缶、ペットボトル等の回収に取り組み、その一部は「トップバリュ」商品の包材や容器の原料に使用しリサイクルされています。
しかし、リユースに関しては、なかなか取り組めてはいないことが課題でした。店頭でのオペレーションを考えると大変に複雑になり、そのボリュームを拡大していくことが難しかったのです。そういった中でご提案いただいたのが「Loop」でした。シンプルな仕組みでありながら、いろいろなメーカーに参加していただき、多種多様な商品を提案できることが大きなメリットだと思います。また、容器回収のプラットフォーム自体がわかりやすいため、お客さまへの周知も容易にでき、みんなでいっしょに使い捨てプラスチックごみ問題に取り組むアプローチを伝えやすいと思います。

Reuse System 便利で簡単、地球に優しい。Loopのリユースシステムで脱使い捨て習慣。

2022年度は全国100店舗を目標に計画

――商品を提供するメーカーサイドからの参加は、どのように行われていますか。

森清:「Loop」側から各メーカーに発信される場合もありますし、我々からもお声掛けをし、ご理解をいただいたところから参加していただいています。たとえばアース製薬さまのモンダミンは、今年になって詰め替えパウチも出てきましたが、衛生面の問題から大きなプラスチック容器が毎回使い捨てされていました。せっかく健康に良い商品なのに、そのブランドを象徴する容器を捨てる行為がマイナスという印象があるように私自身も感じておりました。そのことを先方にお話しするとすぐに賛同され、参加いただけたのです。こういった取り組みの結果、商品の種類は増えていますが、食品のところが進みきっていないことが今の課題です。

――今後、全国展開はどのように進んでいくのでしょうか。

森清:2022年度は全国100店舗を目標に計画を進めています。現状は関東エリアだけですが、今後は他の地域での展開にチャレンジしたいと思います。ただ、1店1店バラバラというわけにはいきませんのでエリアを絞り、取り扱う店舗で塊をつくって拡大をしていきたいと考えています。その中では、受け皿である容器を回収し、検品・仕分け・洗浄を行うLoopの倉庫や工場が大切な役割を果たすと思われますが、今後、取り扱い店舗を拡大しても、余力や能力は十分にあると聞いています。

キーワードは「みんなでいっしょに楽しく」

――最後に「Loop」に注ぐ想いをお聞かせください。

森清:私自身が親の実家が日本海に面したところにあったことから、海岸に打ち上げられたプラスチックごみを子どもの頃から見てきて、その深刻さを実感し、いつしかこの問題に取り組みたいと思っていました。ただ使い捨てプラスチックは、1つの解答で解決できるほど容易な問題ではありません。しかし、我々が「Loop」の商品を広げていけばリユースの機会を増やせるだけではなく、地域の皆さまに波及効果を及ぼせると考えています。私はプラスチック問題をはじめ、幅広い環境問題に対してもみんなで取り組み、それが重なっていくことが大事であると常々感じていました。同時にそこには「かわいい」「楽しい」あるいは「おしゃれ」といった参加する側をワクワクさせる魅力があることでより多くの人を巻き込めると思います。「Loop」をきっかけに、みんなでいっしょに環境問題に取り組む“輪”を広げていきたい。そんな想いを今、抱いています。

――2030年までに使い捨てプラスチックの使用量を2018年度比で半減する目標を掲げるイオン。かつて植樹やレジ袋で時代を先駆してきたように、新たな日本初の取り組みである「Loop」商品の拡大で“使い捨てをしない”ライフスタイルへのシフトを加速させてほしいと願っています。
本日は、ありがとうございました。