「加速化する自然エネルギー100%社会への転換」 脱炭素化へ向かう世界の自然エネルギー電力の急成長~世界各国の最新トレンド/2021年 (松原弘直)

2022.7.7 掲載

2021年は、新型コロナウィルスの影響により一時的に停滞していた世界全体の経済活動が再開し始めたため、エネルギー起源のCO2排出量は約5%増加しました※1。これは、石炭火力発電の発電電力量が約9%増加したことが大きな要因になっていますが、電力需要も約5%増加し、多くの先進国では2020年の落ち込み前の水準に回復をしています※2。一方で、自然エネルギーのうち太陽光発電と風力発電による年間発電電力量が初めて総発電電力量が10%に達して、原子力発電の発電電力量を初めて超えました。太陽光と風力発電の割合が10%を超える国は、日本を含めて全世界で50か国に達しています。

コロナ禍でも世界中で自然エネルギーが急成長するなか、すでに世界各国で主力電源となってきている水力発電や風力発電に続き、太陽光発電の導入が世界各国でさらに進んでいます。REN21では世界の自然エネルギーの最新動向をまとめたレポート「自然エネルギー世界白書」を毎年発行しています※3。2022年6月に公表された「自然エネルギー世界白書2022」によると、世界的なコロナ禍の状況にも関わらず世界全体の自然エネルギーによる発電設備は2021年に315GWが新規に導入され、累積で前年から約11%増加しました。中でも、太陽光は175GWが新規に導入され、23%増加し、風力は102GWが導入されて、14%増加しています。なお、1GWは原発1基分の100万kWに相当します。2021年に全世界で新規に導入された発電設備の約84%は自然エネルギーで過去最高の割合であり、そのうち9割近くが太陽光および風力発電でした。その結果、世界全体の自然エネルギーの発電設備の累積導入量は3146GWとなりましたが、水力発電の累積設備容量は1195GWに達しており、原子力発電(約400GW)の約3倍になっています。REN21のレポートによると風力発電は2021年の年間導入量が102GWで、累積では845GW以上に達しています。太陽光発電は、10年前の2010年には世界全体でわずか40GWだった累積導入量が942GWに達しました。2021年には175GWが新規に導入され、風力発電の累積導入量を超えました。風力と太陽光を合わせた設備容量が2021年末には原子力発電の約4倍以上の1700GWを超えてさらに増加しています(図1)

図1/世界の自然エネルギー(太陽光および風力)および原子力の発電設備の導入量(出典:REN21、IRENA、IAEAなどのデータから作成)

図1/世界の自然エネルギー(太陽光および風力)および原子力の発電設備の導入量
(出典:REN21、IRENA、IAEAなどのデータから作成)

図1/国別の太陽光発電の累積導入量のトレンド (出所:IRENA,SEIAデータより作成)

図1/国別の太陽光発電の累積導入量のトレンド (出所:IRENA,SEIAデータより作成)

世界全体の2021年の自然エネルギー設備への投資額は3660億ドルに達したとBNEF(Bloomberg NEF)により推定されていますが、前年から6.5%増加して過去最大の投資額でした。さらに電気自動車(EV)関連の投資が約2700億ドルに達し、前年から77%増加しており、自然エネルギーへの投資を上回る急成長をしています。熱分野の電化(ヒートポンプ)等への投資額を加えると、コロナ禍の影響にも関わらず世界全体のエネルギー転換関連への投資額は7550億ドルを超えて前年から27%増加したと推計されています。この中では、アジアでの投資額が最も大きく、全体の約半分の投資額3680億ドルに達しており、前年から38%増加しています。国別の投資額では中国がトップで2660億ドルでした。一方で、欧州(EU)全体では1540億ドルで、第2位の米国は設備投資額が1140億ドルでした。

IEA(国際エネルギー機関)が公表した自然エネルギーの展望に関する最新レポート”Renewables 2021”では、2009年から2020年までの約10年間の自然エネルギー導入の実績と2021年から2026年までのこれから5年間の予測が示されています。2009-2014年の5年間の平均では、年間の自然エネルギー導入量は100GW程度でしたが、2015-2020年の5年間の平均では、200GW近くに達して、これからの2021-2026年の5年では、少なくとも毎年300GWが導入されると予測しています。さらに、2050年カーボンニュートラルを達成するIEAのNet Zeroシナリオでは毎年500GWを超える導入を目指す必要があります※4。これには、水力発電が含まれますが、太陽光発電が中心的な役割を果たして年間導入量は200GWを超えると予測しています。風力発電は100GW以上の年間導入量が続くと予測しています。

※1 Global Carbon Project “Carbon Budget 2021” https://www.globalcarbonproject.org/carbonbudget/
※2 EMBER “Global Electricity Review 2022”
https://ember-climate.org/insights/research/global-electricity-review-2022/
※3 REN21 「自然エネルギー世界白書2022」https://www.isep.or.jp/archives/library/13975
※4 IEA “Net Zero by 2050” https://www.iea.org/reports/net-zero-by-2050

太陽光発電の累積導入量では2015年以降、中国が世界第一位となっており、2018年に国レベルの買取制度が中断したにも関わらず、さらに導入が進んでいます。すでに中国が、世界の太陽光発電の年間導入量の3分の1以上を占め、2021年には約53GWを一年間で導入して累積導入量でも2021年末までに300GWを超えて、圧倒的な世界第1位となっています(図1)。米国の累積導入量については、米国太陽光産業協会(SEIA)からの発表では、2021年末には119GWに達し、世界第2位となっています※5(IRENAのデータでは約94GW)。これに日本が約74GWで続き第3位となっています。なお、これらの太陽光発電の設備容量のデータは、太陽光パネルの発電出力が基準になっています(DCベース)。一方、日本国内で公表されているFIT制度でによる導入量は系統接続された出力(ACベース)が基準になっており、DCベースよりも1割程度小さくなるので注意が必要です。ドイツは、2014年まで世界1位の累積導入量でしたが、2021年末では約58GWで第4位です。以下、累積導入量が10GWを超える国が14カ国(前年は13カ国)あり、インドが約49GW、イタリアが約22GW、オーストラリアが約19GW、韓国が約18GW、ベトナムが約17GW、フランスが約15GW、オランダ、英国およびスペインが約14GW、ブラジルが約13GWとなっています。ブラジルは、年間5GWを導入して、10GWを超えました。世界全体で累積導入量が2GWを超える国は31カ国(前年は29カ国)に上ります。

※5 SEIA “U.S. Solar Market Insight” https://www.seia.org/us-solar-market-insight

太陽光発電の年間導入量でみると日本は前年から若干減少して4.4GWを2021年に新規に導入しましたが、それに対して米国はその約5倍の23.6GW、インドは10.3GWを新規に導入しています(図2)。その結果、日本は年間導入量ではブラジル5.2GW、ドイツの4.7GWを下回り、世界第6位でした。世界全体で年間1GW以上の太陽光を導入している国は18カ国ありますが、そのうち5カ国(中国、インド、日本、韓国3.6GW、台湾1.8GW)がアジアです。欧州でも2021年は1GW以上の年間導入量となっている国がドイツ4.7GW、スペイン3.4GW、オランダ3.3GW、フランス2.7GW、ポーランド2.3GW、イタリア1.0GW、ベルギー1.0GWと7カ国に増えました。その結果、人口あたりの累積導入量は、オランダが約800W/人で世界第一になっています(日本は約600W/人で第4位)。

図2/国別の太陽光発電の導入量(2020年末)トップ20 (出所:IRENA,SEIA等データより作成)

図2/国別の太陽光発電の導入量(2020年末)トップ20 (出所:IRENA,SEIA等データより作成)

風力発電市場は2010年以前には欧州の一部の国(ドイツやスペインなど)や米国が牽引していましたが、2010年以降は中国が風力発電市場を先導しており、欧州各国(英国、フランス、イタリア、トルコ、スウェーデン、ポーランドなど)や他の新興国(インド、ブラジルなど)でも導入が進んでいます。中国での風力発電の年間導入量は2014年に20GWを超えて以降、2018年には48GWに達して、2021年の年間導入量は約56GWでした※6。世界全体の風力発電の年間導入量約97GWの6割近くを中国が占めており、日本国内での年間導入量0.14GWの実に400倍近くに達します。中国は2021年末には累積導入量が約344GWと風力発電が300GWの大台を超えました。いまや中国は世界一の風力発電の導入国であり、EU27か国+英国での累積導入量215GWの1.6倍に達して、日本国内の累積導入量4.6GWの75倍以上に達しています(図3)。2021年末の時点で風力発電は中国内の全発電設備容量の約13%に達しており、2021年の風力による年間発電電力量は656TWhで中国全体の年間発電量の7.8%に達しています※7。中国では自然エネルギーによる年間発電電力量が2021年に全発電電力量の27.7%に達し、その中で風力発電は、火力発電や水力発電に次ぐ第三番の電源としての地位を固めて、原子力発電の年間発電量の割合4.9%を超えています。

近年注目されている洋上風力発電については、2021年に21GWが世界全体で新規導入され、前年の6.1GWから大幅に増加しました。風力全体の年間導入量の22%に達しています。累積導入量では約56GWに達しており、風力全体の約7%に達しています。イギリスでは風力発電の導入が洋上風力を中心に進んできており、2021年末までに風力発電の累積導入量27GWのうち洋上風力が世界第2位の14.4GW導入されています(図4)。2021年には中国において17.4GWが新規に導入され、世界一の洋上風力の市場になっており、累積導入量でも26.4GWに達して世界第一位になりました。欧州では英国で2.3GWの洋上風車が新規に導入され第2位になり、第3位はデンマークの約0.6GWでした。欧州各国では、ベルギー(47.2%)、イギリス(46.8%)、デンマーク(32.9%)、オランダ(32.2%)などで洋上風力の割合が累積設備容量の20%を超えてきています。アジアでは、中国以外に、ベトナム(約1.0GW)や台湾(0.2GW)で洋上風力の導入が進んでいます。

※6 WWEA
https://wwindea.org/world-market-for-wind-power-saw-another-record-year-in-2021-973-gigawatt-of-new-capacity-added/
※7 China Energy Portal “2021 electricity & other energy statistics (preliminary)” https://chinaenergyportal.org/en/

図3:世界各国の風力発電の累積導入量の推移 (出所:WWEA,IRENAのデータより作成)

図3:世界各国の風力発電の累積導入量の推移 (出所:WWEA,IRENAのデータより作成)

図4: 洋上風力発電の累積導入量(2021年) 出所:IRENAのデータより作成

図4: 洋上風力発電の累積導入量(2021年) 出所:IRENAのデータより作成