戸田建設のイノベーションを加速するイノベーション推進統轄部 イノベーション推進統轄部長樋口正一郎氏に聞く

2022.7.15 掲載

植物性たんぱく質を中心に、
さまざまな植物性原料に置きかえた「Vegetive」

近年、健康志向の高まりや食習慣の変化により、植物性原料への注目が高まっている。また、 世界人口は2050年には約97億人まで増加し、より多くの食料が必要と予測されている。また環境への悪影響を軽減するために食生活に動物性食品の摂取を減らし、植物性食品の比率を増やす流れが世界の各地で起こっている。特に食肉や乳製品の消費が増加すれば土地、水資源、気候に過剰な負荷がかかる。とりわけ食用牛の場合は豆と比べて蛋白質1グラム当たり数10倍の土地が必要となり、それに比例して温室効果ガスも相当量を排出しているという。

こうした中でイオンは、生産時に排出される温室効果ガスや必要な穀物、水の量など地球に与える負荷が少ない※1植物性たんぱく質を中心に、さまざまな植物性原料に置きかえた※2「Vegetive(ベジティブ)」シリーズを同社のプライベートブランド「トップバリュ」の商品として企画・開発。2020年より、全国の「イオン」「イオンスタイル」「イオンスーパーセンター」「マックスバリュ」にて本格展開してきた。

ちなみに「Vegetive」とは「野菜(VEGETABLE)を前向き・積極的(POSITIVE/ACTIVE)に食事に取り入れてほしい」というイオンから顧客への思いを込めた造語。その名の通り、前述の店舗では大豆ミートをはじめ、肉や乳製品、小麦などを植物性の素材に置き換えた商品が売り場に並び、日々の食事で野菜の摂取比率が増せるようになっている。

※1:Environmental Working Groupの調査による。
※2:商品によって原材料や製造工程にて動物性原料が含まれる場合があります。

ベジティブ画像

大豆を使用しながらも
本物の肉と比べても遜色がないような美味しさ

昨今では新型コロナウイルスの感染防止を契機にテレワークなどによる在宅時間の増加で食を通した健康維持のニーズが高まり、2021 年度のVegetiveシリーズの売上高は、前年比約1.6倍に伸長。植物代替食品の認知度や市場は、今後もさらに拡大することが予想されている。こういった市場動向を見据えてイオンは、これまで以上に様々なシーンでVegetiveシリーズを生活者の“食”に取り入れられるよう、お弁当にも使える、から揚げやナゲット、肉団子など5品目を追加し、計23品目に品揃えを拡充。同商品は、それぞれの商品に合うよう大豆の種類やカットサイズ、配合を工夫し、大豆を使用しながらも本物の肉と比べても遜色がないような美味しさを実現している。

世界資源研究所(WRI)の報告によれば人口増によって世界が食料不足に陥る懸念もあり、現在、供給可能な食料と2050年の食料需要予測には70%の開きがあるという。しかし、WRIの分析によれば、植物性食品の比率を増やすことでこの開きを30%縮めることができるとのことだ。また牛肉の代わりに鶏肉や魚介類を食べるというような小さな食生活の変化でも、農業資源の利用や温室効果ガス排出を大幅に削減できると指摘。さらに植物性食品の摂取を増やすよう呼びかけている。そういった状況の中でイオンのVegetiveシリーズはさらに存在感を高めていくことだろう。

「安全・安心」と「自然環境への配慮」にこだわった
「グリーンアイ オーガニック」

またイオンは、同じくトップバリュのプライベートブランドの商品である「グリーンアイ」を1993年から販売してきた。同商品は「安全・安心」と「自然環境への配慮」にこだわった商品を取り扱うために開発され、有機栽培などの農薬や化学肥料を可能な限り使わず栽培した農産物を中心とした販売からスタート。2008年には国内初のカーボンフットプリント表示をパッケージ上で展開するなど環境問題に対しても先進的な取り組みを進めてきた。さらに2014年には幅広くオーガニック商品を提供するために、従来の「グリーンアイ」をベースに「トップバリュ グリーンアイ オーガニック」シリーズを開発。品目数は2015年の時点で148品目と増やし、アジアの小売で初の海洋環境や生態系の保全、持続可能性に配慮した養殖水産物ASC認証取得商品の販売を始めた。さらに2015年には生物の誕生から次世代への継続というサイクルをすべて人工飼育で実施する完全養殖「本まぐろ」を「グリーンアイ」で提供している。

ベジティブ画像

イオンの「お客さま中心」の思想が
貫かれている2つの食品

我々は生活のあらゆる面で生態系からの恵みを受けている。それを日々、実感できる機会が「食」と言えるだろう。同時にそこには「生物多様性の保全」という課題が内包されている。その意味でイオンのグリーンアイオーガニックは、生活者がこの商品を食卓に登場させることで「持続可能な食の調達」に関わることができ、同時に味覚面でも健康面でも満足のできる食事を享受できる仕組みとなっている。

イオンは基本理念に「お客さまを原点に平和を追求し、人間を尊重し、地域社会に貢献する。」を掲げている。中心に「お客さま」を置くという企業の姿勢は、イオンのすべての企業活動に貫かれている。それは同社が様々に取り組む地球環境を守る活動にも同じことが言えるだろう。Vaneにおいても過去に取り上げてきたレジ袋の有料化や容器や商品パッケージを、ステンレスやガラスなど耐久性の高いものに変え、繰り返し利用を可能にする新たな商品提供システムLoopなどもそこに「お客さま」という生活者の存在は欠かすことができない。

「Vegetive」や「グリーンアイ オーガニック」においては、さらに一歩踏み込み、生活者の暮らしをベースから支える「食」という立ち位置にある。そこで生活者は、「Vegetive」や「グリーンアイ オーガニック」によって美味しさや健康、安心・安全という満足を得ながら、さらにそれらの商品を選ぶという行為が自身の暮らす環境を守ることに繋がっていく。同社の基本理念にある「平和の追求」や「人間の尊重」、そして「地域社会への貢献」が「お客さまを原点」とする意味も鮮明になるようだ。