ANAが2050カーボンニュートラル実現に向けたトランジション戦略を策定

2022.8.16 掲載

ANAホールディングス株式会社(以下、ANA)は、2050年度までのカーボンニュートラル実現に向けて、トランジション戦略を策定した。中長期の環境目標達成を目指し、①運航上の改善・航空機等の技術革新②SAF※1の活用等(航空燃料の低炭素化)③排出権取引制度の活用④ネガティブエミッション技術※2の活用という4つの戦略的アプローチのもと、航空業界における環境対策を推進していく。

※1. SAF:Sustainable Aviation Fuelの略称であり、バイオマスや廃食油、排ガスなど原材料の生産・収集から、製造、燃焼までのライフサイクルでCO2排出量を従来燃料より大幅に削減し、既存のインフラをそのまま活用できる持続可能な航空燃料。
※2. ネガティブエミッション技術 (NETs:Negative Emissions Technologies):大気中からCO2を永続的に除去し、CO2の排出量をマイナスにする仕組み。DAC(Direct Air Capture)は、大気中のCO2を直接回収する技術を指す。

2050年度までのカーボンニュートラル実現に向けて、トランジション戦略
2050年度までのカーボンニュートラル実現に向けて、トランジション戦略

CO2排出量の「削減」に向けて、その戦略の中核となるのはSAF。そこでANAでは航空機の運航上の改善や航空機等の技術革新の導入を進めながら、2030年には消費燃料の10%以上をSAFへ置き換え、2050年には消費燃料のほぼ全量を低炭素化していく予定だ。2022年4月には「SAFの導入促進に向けた官民協議会」がスタートした。こういった中でANAは今後もSAF生産量拡大、価格低減、サプライチェーンの整備に向けた官民、産業間連携等を進めていくようだ。そしてSAF Flight Initiativeの普及を通じて、貨物輸送や社員の出張等で利用する顧客のCO2排出量(SCOPE3)の削減に寄与しながら、各社の企業価値向上とSAFの量産・普及を目指し、経済と環境の好循環を生み出していく。

また、ANAは主要航空機メーカーと先端技術の開発やインフラ整備に関する共同研究プロジェクトに関する基本合意書(MoU)を締結した。その中でエアバス社とは、水素航空機の開発およびインフラ整備に関する共同研究プロジェクトに関する基本合意書(MoU)を締結。現時点では水素・電動航空機の導入は戦略に含んでいないが、航空機メーカーと協力し、先端技術およびグローバルエコシステムの情報をタイムリーに入手することで、環境目標達成に向けて幅広い選択肢の確保に取り組んでいくことになる。

ボーイング社とは、日本における持続可能な技術開発の協業に関する基本合意書(MoU)を締結し、電力・ハイブリッド・水素など先進の推進システム開発に向けて協力をしていく。

一方、上記対策では削減しきれないCO2への対応策として、ANAはDAC等、国内外で研究開発が進められている大気中からCO2を回収・吸収するネガティブエミッション技術の活用によるCO2の「除去」にも積極的に取り組み、2050年度までに排出権取引制度に依存せずに実質ゼロ(カーボンニュートラル)を目指していく。

なお、これらの戦略の実行を目的とした資金調達を行うために、グリーンボンド・フレームワークを策定した。同フレームワークについては、国際資本市場協会(ICMA)のグリーンボンド原則(GBP) 2021および環境省のグリーンボンドガイドライン(2022年版)との適合性に関する第三者評価blankを株式会社日本格付研究所(JCR)より取得。同フレームワークに基づくグリーンボンドの発行時期、発行額等は、金利動向等を踏まえて今後決定していく。