完全循環型社会のためにタイヤの水平リサイクルを。共創パートナーと挑戦を続けるブリヂストン

2022.11.4 掲載

株式会社ブリヂストンは10月17日に「循環型社会に向けた「水平リサイクル」の可能性と使用済タイヤの現状・課題・今後の展望について」と題し、タイヤなどの水平リサイクル事業に関するプレスセミナーを開催した。10月20日「リサイクルの日」にちなんで開かれたこのセミナーではリサイクルへの関心が高まる中、真にサステナブルな社会に必要なタイヤの水平リサイクルを目指すブリヂストンの挑戦を伝えた。

タイヤのリサイクル事業を加速させる
「EVERTIRE INITIATIVE」

同セミナーでは最初に登壇した叡啓大学特任教授・神戸大学 名誉教授石川雅紀氏が、ネットゼロ社会においては炭素歩留まりの高いシステムが求められ、リサイクルシステムにイノベーションを起こすためには水平リサイクルの推進が有効であることを強調した。

続いてブリヂストンが掲げるE8コミットメントと「EVERTIRE INITIATIVE」についてブリヂストンリサイクル事業準備室長岸本一晃氏が説明。「最高の品質で社会に貢献」との普遍的な使命とそれをもとに中長期を見据えて策定したビジョン「2050年 サステナブルなソリューションカンパニーとして社会価値・顧客価値を持続的に提供している会社へ」を軸に制定したものが「E8コミットメント」となることを紹介した。

E8コミットメントは「エナジー(Energy)」「エコロジー(Ecology)」「エフィシェンシー(Efficiency)」「エクステンション(Extension)」「エコノミー(Economy)」「エモーション(Emotion)」「イーズ(Ease)」「エンパワーメント(Empowerment)」のEで始まる8つの価値を表している。

そして、このコミットメントを実現するために”創って売る”タイヤ事業、”使う”ソリューション事業と連動し、「戻す」リサイクル事業のバリューチェーンを構築し、社会価値と顧客価値を両立させることで価値を最大化していくことを目指していると話した。

さらにそのリサイクル事業を加速させるために本年4月に始動したのが「EVERTIRE INITIATIVE(エバータイヤ イニシアチブ)」となる。使い終わったタイヤを資源として原材料に戻す。そのリサイクルをタイヤゴム業界のリーディングカンパニーであるブリヂストンが先導することで将来世代により良い地球環境を引き継いでいく。そのためにブリヂストンに共感してくれるパートナーと共に未来を築いていきたいと結んだ。

水平リサイクルのエコシステム構築には
共創パートナーシップが不可欠

続いて先端材料部門長を務める大月正珠氏は日本のリサイクルの現状に言及。日本における使用済タイヤの回収率は約94%と非常に高い一方、リサイクルはサーマルリカバリーが主となっており、CO2排出量削減と資源循環の観点で課題が残ることを指摘した。

その解決には使用済タイヤをタイヤ原材料に戻し、新たなタイヤとして生まれ変わらせる水平リサイクルを実現することが必須となる。しかし、そもそもタイヤは耐摩耗性、ブレーキ&コーナリング性能、乗り心地、静粛性、低燃費など、その性能を最適化するために、多岐にわたる原材料を使用しているため、使用済タイヤをそれぞれの原材料に分離し、再利用していくことが難しい。例えて言うならば、様々な材料がバランスよく構成されているサラミのようなものミンチにしてしまうと、舌触りや味覚など全くの別物になるという。しかしブリヂストンは今後もこの課題に挑戦していきたいと話した。また製品開発から廃棄に至るまでのリニアのプロセスから多様で巧みな技術をつなぎサーキュラーエコノミーを創っていくことが重要となると述べた。

再び登壇したリサイクル事業準備室長の岸本氏は、水平リサイクルのバリューチェーン(エコシステム)を構築するためには、VISIONを共有し協力する共創パートナーシップが不可欠であると力説。タイヤの水平リサイクル実現に向けて、様々なパートナーと連携しながら、生成物や市場性を踏まえた複数のリサイクルルートの構築を推進中であると話した。その一つとしてビジョンを共有するENEOS社と共に「タイヤがタイヤに生まれ変わる未来」の実現に向けた共創プロジェクトを開始したことを紹介。現在、使用済タイヤ処理における熱回収処理分をケミカル処理に転換することが可能になり、2030年までに量産を想定した大規模実証試験を実施し、その後早期の事業化を進めていくという同プロジェクトの概要を話した。さらに低温分解解重合による高収率リサイクル法開発や米国の微生物によるガス発酵技術開発ベンチャーであるランザテック社と進めている炭素回収及びガス発酵技術を用いたリサイクル技術の開発を紹介。「タイヤがタイヤに生まれ変わる未来を目指してステークホルダーの皆様と協力し、パートナー・規模・地域・リサイクル可能部材の拡大をさらに進めていきたい」と抱負を語った。