Vane Vol.1掲載
アジアにおける気候変動の影響とリスク
第5次評価報告書(AR5)の知見

テルマ・クルーグ IPCC〈気候変動に関する政府間パネル〉 副議長 基調講演 傍聴報告より
国のカバレッジ拡大と課題
様々な気候変動を見てきまして私が一番関心を持つのはそれが「人為的介入」である部分です。気候変動に於いて見られる現象は、人為的活動が影響を与えています。そして人が原因になるならば、解決もその原因にもならなくてはならないと考えています。
前回の第5次評価報告書に関しては、アジア地域に関して対象とする国が増えました。また観測された、将来の影響に関して、それよりも前の評価報告書よりも国のカバレッジが拡大されました。
そしてAR5においてはアジアの章で6つの地域情報が提供されました。ただ北部、中部、西アジアにおいては観測された気候変動とその影響が前回の評価レポートにおいて、まだ不十分であるとされております。その理由の一部としては、情報にアクセスができない、アクセスできたとしても不十分であり、淡水、沿岸システム。また底辺地に対する情報把握もされていない。食料生産システム、それから食料安全保障、産業、インフラ、人間のヘルス、安全保障、さらに生活、貧国についての情報が不十分となっています。つまり非常に重要な知識のギャップがあって結論を導き出せないという状況を示しているわけです。
アジアで気候変動を一番受けやすいのは沿岸の底辺地
全体として気候変動の証拠が最も揃っているのは自然システムです。もちろん人間システムへの影響も気候変動に影響される部分がいくつかありますけれども、アジアで気候変動を一番受けやすいリスクにさらされているのは沿岸の底辺地、つまり河川の氾濫が頻繁に起こる地域に住んでいる人たちであるとしています。そしてそれはおよそアジアの都市人口の半分に相当しています。
海面上昇によりまして、例えば熱帯サイクロンの影響を大きく受けることになりそうなのは沿岸の底辺地です。たとえサイクロンの頻度強度と同じでも沿岸の低地、ゼロメートル地帯の人たちが影響を受けると、これは海面上昇によるわけです。アジアの人口の9割以上がサイクロンのリスクにさらされているわけです。
気候変動によって絶滅した生物は近年少なくなっていますけれど淡水または生物種の多くのリスクと回遊パターン、そして量が変化をしてきております。また気候変動及び淡水資源への影響は場所により大きく異なるだろうと考えています。

生物多様性への影響
気候変動で絶滅した種こそ比較的少ないけれど、水温上昇によりまして温暖な日本では海藻が減少しております。また日本の南西部は熱帯種が増えております。これが魚群に影響を及ぼしています。高いレベルで予想されていますのはサンゴ礁の白化が進み、その他、藻類や軟体動物、といった生物が大きく減少し、さらに海面温度が上昇すること。そして海水の酸化が進むという流れにいくであろうということです。これは二酸化炭素の濃度が、大気中で高まっていることによるものであります。