Vane Vol.1掲載
RE100へ、新たな価値を発信し続ける企業

様々な販促ツールを「いるとき」「いる量」だけ作り、「好きな場所」へお届けするカルネコ株式会社。
斬新なビジネスモデルを開発し、販促力のアップと同時にCO2削減を叶えてきた同社の活動内容を加藤孝一社長に伺った。
経費ロスとCO2排出を抑える受注生産方式
――カルネコの提供する販促物といえば商談後から制作し、お届けする「受注生産方式」で知られていますが、お客様の評価はいかがでしょうか。
加藤 多くのメーカーの販促物は商談の前に作られています。一度に作ったほうが安く、そして早く納品ができるからです。結果として納めた販促物と現場で実際に必要な数との差ができ、かなりの量が無駄になる。事実、半分、あるいはそれ以上の数の販促物が売り場で使われていない状況が生まれます。つまり安い価格で販促物を制作しているように見えても現実は多くの経費ロスが生じているわけです。そしてそのほとんどは紙ですから燃やされます。またリサイクルするにしても熱源を使いますのでCO2が発生し、地球温暖化を進行させてしまいます。
そういった経費のロスとCO2の発生、この2つを出さないビジネスモデルが、「いるとき」「いる量」だけ作り、「好きな場所」へお届けする受注生産方式になるわけです。
大量の販促物を受注前に一度に生産するといった背景には、全国にある営業所のどこであっても同じデザインで一定の反響が得られるといった目論見もありました。しかし時代は小ロット化が当たり前。小売業ごとにほしいメッセージは異なってきています。そのためにカルネコの受注生産方式ではあらかじめ、たくさんのメッセージをデザインし、お店ごとにお選びいただくスタイルを採用していますので、販促に対するきめ細かいニーズにもお応えできています。
お客様からは経費のロスを抑えられたという喜びはもちろんですが、いらないものを大量につくってきたという罪悪感が減り、「気持ちがラクになった」というお言葉を頂いています。
配送費の格差にカルネコならではの答えを出した共同配送システム
――受注生産方式と共に強いインパクトを持つのは「共同配送システム」ですね。これに対してのお客様の反応を教えてください。
加藤 2017年の10月から実施している新しい配送の仕組みが共同配送システムです。物流業界は10月から料金を値上げしました。これは今までと比べて2倍以上の水準になり、どうしてもお客様に転嫁しないと赤字になります。ただ値上げをどう改善して見せていくかが非常に重要になってきます。たとえば都内と沖縄を比べた場合、お届けする配送費は大きくちがってきます。都内なら500円未満で済むところが沖縄に配送する場合は4千円以上になるでしょう。そうなると配送費が原因になって販促費に格差ができてしまいます。
この格差は現場の営業マンにとっては許せない話です。ところがたとえばビールメーカ主要4社でお届け先が同じお店なら、販促資材をまとめて配送することで配送費が抑えられます。そのことで配送費の値上げに対してカルネコならではの答えを出すことができました。こういった提案をしてくれる会社はカルネコが初めてだったというお褒めの言葉もいただいています。しかも4回バラバラで配送するよりも一回で済む分、排出されるCO2も減らせ、地球温暖化の防止にも寄与できています。
カーボン・オフセットを加速させるEVIの活動
――カルネコが進める環境貢献型プラットフォームEVI(Eco Value Interchange)も大手企業が参加するなど反響が高まっていますね。
加藤 森の中にある余分な木を間引くと太陽の光が根元まで当たるようになり、木がぐっと成長しCO2を体の中に蓄える容量が増える。つまり光合成の力が高まるわけです。しかしその作業を継続するのには手間が必要になります。手をかけて苦労して森林をメンテナンスすることによって森林のCO2の吸収力が上がる。その上がった分をクレジットという名称で販売しています。それをサポートしているのがEVIです。
企業はCO2を排出しながら生産活動・経済活動をしています。しかしクレジットを購入し、そのお金を森林整備に回すことで自分たちの出したCO2を消せる。それがカーボン・オフセットの考え方なのですが、なかなか普及しませんでした。そこでEVIではクレジット活用事例を生み出し、積極的に活用していただけるよう、アプローチをしてきました。その結果、あまり芳しくなかった森林のクレジットの購入件数が伸びるようになってきたのです。
2011年の3月からはじめ、これまでに7千トンくらいになると思います。嬉しいのは今年の2月からソフトバンクさんの電力を売る会社がこの活動に加わっていただけたことです。EVIには全国93ヶ所の森林クレジットが預けられていますが、それを活用し、契約しているご家庭から応援したい森のクレジットが購入できる「自然でんき」というサービスをスタートされました。規模の大小を問わず、EVIに参加していただけることは有難いのですが、その上で大手企業が加わることでますますこの活動に拍車が掛かっていくのではないかと期待を高めています。
森林事業者さんが自らそうした販売先を見つけようとしてもなかなか術がないし、市役所や自治体、商工会に話をしてもカーボンオフセットそのものを説明されようとするのでなかなか相手に伝わりにくいのが現状です。しかしEVIのこうした事例があるとわかりやすくお話ができるというご評価もいただいています。
またスーパーマーケットトレードショーという日本中のスーパーが集まるイベントが毎年2月頃に開催されていますが3年間、環境省さんとタイアップしてブースを出してきました。EVIでこれまでつくってきた商品の展示や試食をしてもらっているのですが、スーパーの社長さんやバイヤーさんに「そろそろこういう森を助ける商品を売り場に並べてもいい時期ですよ」というプレゼンテーションもやらせてもらっています。このような取り組みもEVIの普及につながっているのではないかと考えています。
もちろん我々が行ってきたことは地球温暖化の防止にとっては微々たるものです。しかし動かなったものが動いたという事実が森林事業者様への勇気づけになっているのではないかと思います。
カーボンの購入は地球温暖化を防ぐため以外でも効果を出しています。気仙沼のある水産会社様ですが、岩手県住田町のクレジットを購入し、自分たちの商品にEVIのマークを入れ、毎月売れた数をご申告いただいています。ここは東日本大震災で大変な被害を受けました。世間では東北への支援は十分にできていると思われているかも知れませんがそこの社長さんがおっしゃるにはまだまだ思うような復旧の姿にはなっていないとのこと。そこで未来の子供たちの環境を守り、このエリアへの投資を行うという意味でEVIの活動をご支援いただいています。
また蘭の花をつくっている企業の社長さんですが中小企業が社会貢献といっても何をやったらいいか、なかなかわからなかったそうです。しかし欄の花一鉢につき10円のクレジット購入が、神奈川の森林の支援につながることを社員が誇りに感じていると第一回目のEVIマッチングイベントのときにお話しになっていました。

CO2ゼロの道の駅をつくるネットワーク構想
――加藤社長が力を入れている道の駅の活性化に関してはいかがでしょうか。
加藤 全国にある道の駅の経営状況ですが、すべてがけっして良いわけではありません。道の駅は地元の産直品を並べるのが基本で他エリアのものを並べることは少ないでしょう。そうすると売り場はいつも見慣れたものばかりになり、どうしてもマンネリ化が生まれます。その状況が続けば消費者に与える刺激もなくなり、購買も少なくなってきます。
どの駅もよく似た状況に陥るのであれば一押し商品を交換して並べることで目新しさにつながり、「行ってみようか」という気分になる。その上で商品を購入することでクレジット購入につながるという仕組みをつければさらに刺激が生まれます。このようにして「CO2ゼロの道の駅」も誕生しました。
道の駅ネットワークへの取り組みはそのような考え方に基づいて行われていますが、関係者の皆さんにこの話をすると概ねOKが出ます。ただ道の駅を立ち上げるときの経緯で地元の商品しか売らないという約束があります。だから皆さん、立ち止まってしまうのです。商品の交換ですぐに思い浮かべるのは何箱購入するか、ということ。そこで一個から交換が可能であることを話すとホッとされます。心理的な壁を低くしてあげることもこの取り組みでは大事だと痛感していますね。
――最後に加藤社長の今後の抱負をお聞かせください。
加藤 温暖化に対応しているか、していないか。またCO2削減に努力しているか、していないか。それがビジネスの鍵となる時代がそこまで来ています。今後はCO2を排出している企業の法人税が高くなり、排出するものを売っている会社は投資がまわってこないというような世の中にもなっていくことでしょう。
したがってカルネコ自身もそれらの取り組みを新たに一からはじめなければなりません。そこで今、経営企画室を中心に検討しているのはRE100、つまり再生可能エネルギーだけで生産をまわすということ。それを具体的に指示し、数か月以内に実現したいと考えています。そして私どもの工場が再生可能エネルギーだけで運営されている状態を世の中の人に見ていただけるようになりたいと思っています。また私どもが提供しているPOPですが製作には年間1400トンのCO2を出します。それをクレジット購入によってカーボン・オフセットし、お受けしています。通常のプロモーション調達と比べるとカルネコに発注した場合0になるのでプロモーション活動を通してCO2排出を削減していることがCSR報告書に謳っていただけるようになります。それを受けてEVIの活動を継続していく、そして、私たちカルネコのメンバーの環境に対する意識をさらに高めていきたいと考えています。
――ありがとうございました。