Vane Vol.1掲載
世界をリードするステークホルダーの動向・更なる行動の強化

田中聡志氏 IGES 統括研究ディレクター プリンシパル・フェロー
COP21から続く様々な議論
COP23はブラゾーンとボンゾーンゾーンからなり、ブラゾーンで交渉が行われまして、ボンゾーンの方では各国のパビリオンやサイドイベントが行われていました。
そしてもう一つ大きな存在感を放っていたのが米国気候変動センターでした。ただ会場によって雰囲気が全然違ってきます。
ボンゾーンの方で行われた非国家主体、非政府主体の行動は、実は今始まったことではなく、最近のCOPでは必ずメイン会場とは別に用意され、様々な議論が行われてきています。
COP21ではパリ協定で役割を認識し、リマパリ行動アジェンダが発足。COP22においてはグローバル気候行動を行うマラケシュ・パートナーシップ(GCA)がスタートしました。そしてGCAの進展とタラノア対話へのインプットがなされたと思います。
非国家主体の行動は着実に進展
そのGCAの進展ということですが今回は具体的にかなりのスペースと時間を取って議論が行われ、自治体、企業、投資家、といった重要なステークホルダーの皆さんが参加して実際の気候変動に対処するためにどういう取り組みを取っているか、どう強化しているか、こういった経験をどのようにして共有するかという議論が非常に幅広く行われました。
その成果ですが非国家主体の行動は着実に進展しているようです。たとえば自治体でも長期計画と長期目標がいろいろなところで採用されている。企業の皆さんの中でも典型的な例として、省エネを格段に進めるとか、或いは科学的な根拠に根差したそれぞれの基準を設けています。
それから適用についても成果が見られました。実際に温暖化という気候変動が顕在化しています。そういうものにどう対応していくかという観点からの取り組み、それに加えて何をするかだけではなく、どういう風に行っていくかということに対しても世界の様々なセクターと議論が行われ、その連携が進んでいます。
そういった意味で、今回のCOPでは対話についての決定の中に今、述べたようなプロセスが盛り込まれていますので、非国家主体、非政府主体の役割がどんどんフォーマルな形で位置づけられ、それが評価されていると言えると思います。
ルールを作るのは大事です。しかし実際に動かすのは皆さんであり、我々、或いは実際のマーケットを支えている人たちでありますから、そういう人たちの協力なり、自主的な参加がないと参加ルールはルールブックの中だけで、社会では全然動かないということになりますので今回の結果はある意味、自然なことではないでしょうか。

「何を」だけではなくて、「どう」達成するか
ボンゾーンで行われた議論とその雰囲気で少し感じたことを述べていきます。
まず一番大きなセクターの議論にありましたように、単に抽象的な気候変動ルールなどではなく、それを実際に、それぞれのセクターの中でどういかしていくかということで、具体的な行動、あるいは課題といったものに対する議論が非常に高まっているのではないかと思いました。
また2017年は夏から秋へとずっと気候災害が続きました。特に中米カリブ地域ではハリケーンが数多く起こっています。そういうことではレジリアンス、適用、ロスやダメージをどうするかという関心は非常に高くなっています。またそれらの背景もあり、その具体的な取り組みの強化といった文脈の中でも特に資金とレジリアンスについては議論が深まっているのではないかと思います。
さらに社会的なアテンダとの連携ですがSDGsの達成に向けてどうしていくかということ。あるいは災害、防災、こういったものへの準備なり対応をどのように進めていくか、またジェンダーや原住民といった非常に社会的な課題についても気候変動との関連で、議論が進められているように思います。それらを含めて何を達成するのかだけではなくて、どう達成するかという様なことも非常に大きな課題となってきているのではないのかなと感じました。