私たちにとってエシカル消費とは何か

末吉 里花 氏
一般社団法人 エシカル協会
代表理事
人・社会・地球環境に配慮した消費行動
私はエシカル協会という団体をやっております。これは2015年11月にできまして、まだ設立して3年目という小さな団体です。今、我々が何をやっているかと申しますと、一般の方々に向けてエシカルとは何か、あるいはエシカル消費とは何か、そしてエシカル消費をどのように生活の中に取り入れられるのか、というようなことをお伝えしています。同時に、生活者の意識が高まったときにエシカルなものを手にできないと困りますので、企業サイド、事業者に向けてエシカルなものづくりをしてくださいという働きかけをしています。ですから事業者と消費者をつなぐような役割をしております。
エシカルというのは、英語で直訳しますと「倫理的な」という意味です。一般的にいう倫理的なという意味は、法的な縛りはなくても多くの人たちが正しいと思っていることで、本来人間が持つ良心から発生した社会的な規範こそエシカルであると思いますが、今、世の中で耳にするようになったエシカル、あるいは協会として推進しているエシカルというのは、人・社会・地球環境・地域に配慮した考え方や行動のことです。そして「倫理的な」というのは、形容詞なので必ずその後に名詞が来なくてはなりません。ですから我々はエシカル消費ということに注目をして、皆様に伝えています。
エシカル消費というのは、人・社会・地球環境に配慮した消費行動のことです。なぜエシカル消費に注目をしているかと言いますと、この地球上に生きている人たちすべての人たちは消費者ですよね。何かを消費して毎日暮らしている。そういった中で、どんな人も今日から、明日から、人や社会に環境、地域に配慮したことができるということです。つまり非常に身近なところから、世界が抱える様々な問題の解決の一端を担える、それがエシカル消費です。
エシカル消費というのはモノの過去、つまり、そのモノを誰がどうやって作っているかということを確認することができ、モノを使っている今現在、大切に長く使い続ける、そして、使っているモノが将来ごみになるのか、あるいはリサイクルできるのか、それとも誰かにあげることができるのか、そういった未来のことまでをも考えて消費をすることがエシカル消費であると伝えています。これは非常にハードルの高いことなのですが、未来のことまで含めて考える視点はとても重要なことであると思っています。
エシカル消費はなぜ必要か
そもそも、このエシカル消費がなぜ必要になってきているのか、少しだけそのことについてお話をさせてください。今はモノがあふれている世の中です。お金を払えば何でも手に入る時代です。しかし、モノを手に取ったときにそのモノというのが、誰がどこでどうやって作られているのか、なかなかわかりづらい世の中になっています。大量生産のものはもちろんそうですが、すべての製品にモノの背景やストーリーが書いてあるわけではありません。となると、消費者とモノの背景の中には厚い壁があって、我々消費者というのはこの厚い壁を乗り越えて、裏側を知ることができないのです。それは非常に危険で問題であると思っています。なぜならモノづくりにおいて、その背景では様々な問題が起きているからです。たとえば環境汚染や環境破壊によって引き起こされる気候変動です。
あるいは、モノというのは必ず誰かの手によって作られているので、作っている人たちが苦しい思いをしている。それは大人だけでなく、児童労働で子どもが苦しい思いをしている場合もあります。そしてこの大きな問題がからみあって、貧困問題も引き起こしているわけですよね。
この地球には、人間だけが暮らしているわけではありません。多くの生き物と共に暮らしていますが、生物多様性が失われつつあります。これらの問題は解決するのが難しい非常に大きな問題です。それなのにも関わらず、私たち消費者がこの厚い壁を乗り越えてみることができなければ、こういった問題というのは問題になりません。なぜなら問題というのは、誰かに認識されて初めて問題として捉えられるからです。ですから私たちが非常に重要に思っているのは、今世界で起きていることをどんな人も知ることができるような世の中をつくっていきたい。この間にある大きな厚い壁を取り除く、そういった活動がエシカルな活動の第一歩であるというように考えています。