国際サンゴ礁年オープニングシンポジウム
パネルディスカッション/傍聴報告

パネルディスカッションの様子
【ファシリテーター】 | 【パネリスト】 ※順不同 |
斗ケ沢秀俊 氏 | 中野義勝氏:沖縄県サンゴ礁保全推進協議会 会長 |
毎日新聞社 | 栗原晴子氏:琉球大学助教/日本サンゴ礁学会教育普及委員会委員長 |
健康医療環境本部長 | アゴスティ―ニ・シルバン氏:筑波大学助教 |
佐竹伸介氏:チーム美らサンゴ「第3回グッドライフアワード環境大臣賞最優秀賞受賞」 |
サンゴ礁のために私たちができること
【サンゴ礁の保全を様々なスタンスで守る】
斗ケ沢:毎日新聞の斗ケ沢と申します。このパネルディスカッションを通じて「サンゴ礁のために私たちができることをいっしょに考えていきたいと思います。今日は民間企業、現場の実務者、研究者のパネルディスカッションということですが、まず初めに自己紹介とご自身の活動をお話しいただけますでしょうか。
中野:沖縄県サンゴ礁保全推進協議会の会長をしております中野と申します。職場は琉球大学にあります。サンゴ礁の保全と地域との間に起こる課題解決などについての活動を行っております。
栗原:琉球大学で教員をしながら、日本サンゴ礁学会でサンゴ礁について広く一般社会に伝えていく活動を行う教員普及委員会が去年立ち上がりました。私はそこで委員長を仰せつかり、大人はもちろん、子どもたちにもサンゴ礁の研究についての新しい情報や実態について紹介させていただいています。
シルバン:筑波大学のアゴスティ―ニ・シルバンです。昨年から今年も科学探査スクーナー船タラ号に乗り、全世界のサンゴ礁の実態調査の活動を行っています。今年は2年間をかけて、東京湾の勝浦から初めて沖縄までに航海しながらさらに世界のいろいろな海を調査していきます。
佐竹:チーム美らサンゴという企業が集まって活動しておりますので少し内容をご説明させていただきます。チームの目的としてはいろいろな企業の方がお話されているように、美しいサンゴを広め、大切にしていく活動をしています。特徴は、自治体様などから支援があって活動が成り立っているということです。企業19社が集まって協賛金を集めさせていただきまして、そのお金を使ってサンゴの苗や活動費用に使うなどをしています。また19社の協賛の会社だけではなく、一般の方もインターネットから申し込みができ、お子様でもサンゴの植え付けを海面から見学できるシュノーケリングに参加できるようになっています。
【サンゴ礁の重要性とその危機】
斗ケ沢:ありがとうございました。ここからはサンゴ礁の重要性とその危機について議論したいと思います。最初にシルバンさんからの世界のサンゴ礁の状況についてご紹介いただけますでしょうか。
シルバン:人間が住んでいない島でもサンゴの破壊を観測することができました。それが予想外でした。もちろん人口が多い島ではそれ以上にひどい状態でした。しかし島によってはまだまだ美しさを残しているサンゴ礁もあり、その姿を画像に残し、それを多くの人が見ることで「地球上からサンゴ礁を無くしたくない」という想いを広がっていくのではないかと考えています。
斗ケ沢:栗原さんはサンゴ礁の重要性とその危機について科学者の役割についてどのようにお考えでしょうか。
栗原:科学者の役割というよりは、科学者としてサンゴ礁の素晴らしさについて少しお話をしておきたいと思います。まずサンゴ礁は本当にたくさんの生き物が生息しているというところです。肉眼では確認できないような小さな生き物が数多くいます。そこにはまだ名前もない生き物も生息しています。サンゴ礁があることによって波が小さくなるという研究報告もあります。実際にどれくらい小さくなるかというと、大体90%。つまり10メートルの波ですと、1メートルの波になるということが研究などでわかっていきます。このようにサンゴ礁は波を減らしてくれる、大きな防波堤のような効果があります。サンゴ礁は非常に複雑な地形をつくっています。その複雑さによって、多様な生物が生きていけることになります。また、サンゴ礁の中の水は非常に透明できれいです。なぜ透明かというと、サンゴ礁が生息するのは温かい海で、そこは養分がとっても少なくなっています。このような中でサンゴ、あるいはサンゴ礁という生き物は、少ない養分を効率よく上手に使うことでうまく発達していきます。そして効率よく水の中の少ない養分を使い、それを時々外に排出して、とても見事にリサイクルをしているので全く無駄がなく、いつもきれいな状態が保たれます。ここまでサンゴ礁についてお話しましたがおそらく一番重要なのが単純に見ていて癒されるところだと思います。