イオンがウナギの持続可能な調達に関する
説明会を開催

イオン株式会社
執行役
環境・社会貢献・PR・IR担当
三宅 香 氏
「うなぎ蒲焼文化」を未来の子どもたちに
ウナギの現状
今、枯渇が懸念されている食料資源の一つがウナギです。その種類は世界で16種が確認されていますが、すでにヨーロッパウナギは絶滅危惧種IA類に指定され、ワシントン条約付属書Ⅱに掲載され、取引規制によりヨーロッパから出せない状況となっています。アメリカウナギとニホンウナギは絶滅危惧種IB類となっており、今回の保全プログラムの対象であるインドネシアウナギは準絶滅危惧種に指定されています。
ウナギの世界生産量の90%は養殖です。ただ、その稚魚であるシラスウナギは養殖できないため、川や海で採捕して養殖場に入れ(池入れ)、育てることで成り立っています。水産庁の資料によると、ウナギの流通量もシラスウナギの採捕量も近年減ってきていることがわかります。
シラスウナギの管理についても課題があると言われており、採捕された数と池入れされた数、そして海外から輸入された数とが合わないことなども報道等によってご存知だと思います。
ウナギの持続可能な調達を実現するために
こうした現状を踏まえ、イオンとしてウナギの取り扱いをどうするのかということを検討してきました。
特に当社としては、農産物や水産物の持続可能な調達を行うことを、すでに方針、目標として掲げており、持続可能な調達をしないと未来はないと考えています。これはウナギにおいても同じです。そこで「イオン持続可能な調達原則」、さらに「イオン水産物調達方針」を元に今後の調達について考えてきました。
「イオン水産物調達方針」では、資源枯渇防止と生物多様性保全の観点から定期的にリスク評価を行うことを定めており、これまでもこの方針に基づいて取り組んできました。一例としては、太平洋クロマグロへの対応があります。昨今様々に取り上げられていますが、手を打たなければ厳しい状況にあることから、再生可能な完全養殖魚へのシフトや自主制限基準を設けた調達を行っています。
ウナギの取り扱い状況を見てみると、イオンリテールでは、2001年と昨年を比較すると約10分の1まで減っています。
取り扱う種類については、2004年にヨーロッパウナギの取り扱いを中止しています。それに代わるものとして2012年よりインドネシアウナギの販売を少しずつではありますが始めております。

ニホンウナギとインドネシアウナギの2種を主軸に
今回策定したイオンのウナギ取り扱い方針では、次の4点を定めています。
まず、販売は、ニホンウナギとインドネシアウナギの2種を主軸とします。次に、2023年までに100%トレースできるウナギを販売していきたいと考えています。これはニホンウナギもインドネシアウナギも同様です。これまでも池入れ以降のトレースは出来る状態にしてきましたが、池入れ前のシラスウナギについてもトレースできるようにしていきたいと思います。複雑な流通経路があり、すぐには実現できませんが少しずつ体制を整備していきます。3つ目は、インドネシアウナギの持続可能性を担保するために「インドネシアウナギ保全プロジェクト」を進めます。そして4つめは、ウナギ以外の原材料を使用した蒲焼の商品開発を推進することです。
ウナギの取り扱いについてまとめると、ヨーロッパウナギはすでに取り扱いを中止しており、アメリカウナギは2018年9月から中止します。ニホンウナギはトレースの比率を上げ、2023年には100%トレースが可能なウナギの取り扱いを目指します。インドネシアウナギは先ほど述べましたように保全プロジェクトを実施します。他の絶滅危惧種のウナギのようにしないために、プロジェクトを通じて、持続可能な漁業の確立に向けて取り組んでいきたいと思います。
「インドネシアウナギ保全プロジェクト」では施策が2つあります。1つはシラスウナギの採捕からの資源保全ということで2023年のMSC認証取得を目指してプログラムを進めます。シラスウナギが減少しないようにFIP(漁業改善計画)を進め、持続可能な漁業の体制を確立してまいります。
もう一つは責任ある養殖です。プロジェクトには、養殖の改善計画も含まれており、いずれは、ASC認証を取りたいと思っております。こうした取り組みを、いずれは日本国内での、ニホンウナギに関しても展開し、サプライチェーンの見える化に力を入れていきたいと考えております。

ウナギの和食文化を未来へ残すために
イオンはこの「インドネシアウナギ保全プロジェクト」を通して「うなぎの蒲焼」などの和食文化を次世代に残していきたいと考えています。ウナギは絶滅危惧種だから、もう食べないことにすれば良いではないか、という議論もあります。しかし、私たちは子どもたちに、ウナギを食べる伝統の和食文化を残していきたい。そのために流通業としてできることを実行していきます。
