世界へ新たな文明を発信する、地域循環共生圏の可能性を探る
環境省 総合環境政策統括官 中井 徳太郎 氏

昨年4月に第五次環境基本計画として閣議決定した地域循環共生圏。そこには日本発の脱炭素・SDGs構想となる壮大なスケールが描かれている。今回は、環境省 総合環境政策統括官 中井徳太郎氏にインタビュー。そのビジョンが持つ意義と今後の可能性等について話を聞いた。

SDGsの行先を示したビジョン

――地域循環共生圏にはどのような意義があるとお考えでしょうか。

中井 近年、地球温暖化で集中豪雨や自然災害が多発しているのはご存知の通りです。こうした状況の中で今後、人類がこの地球で生き残ることができるか、という危機感が肌身で感じられるようになってきました。
 さらに日本は人口減少による、国際競争力の損失やコミュニティー消失等の課題が複合的に押し寄せています。そういった中で環境、経済、社会を一緒に考えなければいけない段階にあるというのが現在の状況となっています。
 この点については、実はSDGsで表明され、17のゴールは環境、経済、社会までバランスよく網羅されています。しかしそれらが上手く回っていく具体的な姿や形というのはまだ描き切れていないのが実情です。その意味から地域循環共生圏はSDGsの行き先を描いたところに意義があると考えています。

「森里海川」というエコシステムの再生

――地域循環共生圏のベースにある思想はどのようなものでしょうか。

中井 気候変動は、産業革命以降、化石燃料を中心とした資源を大量に燃やし、生産、消費、そして廃棄という流れの中で生まれました。そのため地球のエコシステムが破壊されたのです。
 結果として便利な社会は創出できたわけですが、地球のエコシステムという自分の身体を痛めつけながら、このような状況を作ったのです。
 たとえば、お酒好きな人でも週末に休肝日を持てば身体が回復します。地球のエコシステムもそのように本来はレジリエンスを持っているのですが、回復しないところまで行ってしまうと不可逆的な破綻状況になります。
 地域循環共生圏では、地球のエコシステムを「森里川海」という言い方で呼んでいます。そして、そこでは、自然の恵みである空気や水、食糧など生命を維持していく上で欠かせないあらゆるものが、生態系サービスとして提供されています。
 しかし、その限界がきており、エコシステムの有機的な健全性を目指す「森里川海」の恵みをもう一回見つめ直し、これを現代の技術と英知を上手に駆使して私たちの暮らしに健全な力を蘇らせていく、それを実現する根本思想が地域循環共生圏であると位置づけています。

環境省 総合環境政策統括官
中井 徳太郎 氏