「気候危機宣言」のその先へ
新たな変革を担う再生可能エネルギーとユニコーン企業

  • 環境省は6月12日、「気候危機」を宣言し、地球温暖化の危機的状況への対策強化に取り組む。そういった中で今、進む「2050年ゼロカーボンシティ」と「環境省スタートアップ支援」にスポットをあて、現状や意義などについて環境省環境計画課 課長 松田尚之氏に伺った。

    強力なリーダーシップと危機意識がゼロカーボンを加速

    ――地方自治体に対し、2050年を目標に二酸化炭素排出実質ゼロに取り組む「2050年ゼロカーボンシティの表明(以下、ゼロカーボンシティ)」を環境省が呼びかけた背景は何でしょうか。

    松田:ゼロカーボンシティは8月26日現在151自治体となっております。内訳は21都府県、82市、1特別区、37町、10村となります。多くの自治体に宣言をいただき、人口規模では、日本の総人口の過半数を大きく超えています。
     まずは京都市、東京都、横浜市という人口が多く、非常に力のある大都市が自ら国際会議の場でCO2排出を2050年までにゼロを目指すという宣言をし、それが発端となり広がっていきました。国際的な潮流やIPCCの1.5℃の報告書などを受けての宣言だったと聞いております。
     その上で小泉進次郎環境大臣の就任が大きいと思います。小泉大臣は非常に発信力があり、その強力なリーダーシップのもと、環境省としても情報発信を行ってまいりました。その中で昨年の12月には小泉大臣の名前で呼びかけ文を全国の自治体に届けさせていただきました。そういったこともゼロカーボンシティの増加につながったのではないかと思います。
     環境省の職員が地方自治体の職員の皆様に働きかけるだけでは、ここまでのスピード感は出せなかったでしょう。まずは政治のステージにおいてインパクトのあるアクションを起こしたことが、効果を発揮したと言えます。
     もちろん大臣のメッセージだけではありません。日本各地で大雨が頻発し、昨年は台風15号・19号が大きな被害を及ぼし、今年の大水害も記憶に新しいところです。もはやどこの地域もこういった災害が起こる可能性があるわけですから、気候危機については、それぞれの自治体の首長には実感されていたと思います。

  • 環境大臣からのメッセージ 2019.12.24

鍵となるのは再生可能エネルギーの供給増

――ゼロカーボンシティを表明した地方自治体で課長が感じる最もホットな話題などがあれば教えてください。

松田:ゼロカーボンを宣言した後にそれを実際に実現していくために多くの皆様がご苦労されています。我々もしっかりと支援していかなければいけないと痛感しております。
 そういった中で自治体が関与した電力会社の設立の動きや先進的な取組が、日本でも数多く起きています。そこには太陽光や風力もありますし、森林から集めた木質のバイオマスや廃棄物を活用する場合など、地域によって様々に資源を活用しています。
 こういったものをうまく活用して発電し、再生可能エネルギーを自治体が作り、それをさらに地域の住民の方に使っていただく、まさにエネルギーの地産地消の成功例が数多くあり、自治体新電力を核とした地域資源開発が今、最もホットなのではないかと思います。
 たとえば別の部署にいるときですが、岡山県真庭市に行く機会がありました。ここもゼロカーボンシティを宣言しております。この市は約8割が森林で古くから美作ヒノキで知られる木材の産地として知られ、林業と木材業で成り立っています。ここでは森林の生育過程で間引いた間伐材の処分に困っていました。また製材では数多くの端材が出てきます。これを今は、バイオマス発電の燃料として有効に活用しております。
 2015年4月には真庭バイオマス発電所を真庭市に設置し、そこに地域内に発生した木質系バイオマスを投入して、2万2千世帯分の電力に相当する1万キロワットの発電能力を有するまでになりました。これは真庭市の全世帯の電力を賄うだけではなく、バイオマス発電に必要な間伐材や端材を購入することでサプライチェーンにも利益を提供できています。
それ以外でもバイオマス発電に、し尿や汚泥、あるいは有機系の食品廃棄物を活用する他、太田市長と共に様々な地場産業の方々が連携し合ってゼロカーボンシティや温暖化防止対策を盛り上げています。
 もう一つの例として横浜市を挙げましょう。同市は大都市のため、再生可能エネルギーを作り出すというのは制約があります。そこで提携したのが青森県の横浜町。そこは風が強い地域で風力発電が有名です。そういった地方で作られた再生可能エネルギーを東北の12市町村と連携協定を締結して横浜市内の企業が使っています。これも非常に興味深い取り組みだと思います。
 再生可能エネルギーをどのように活性化していくか、という点では、ふるさと納税で寄付した人に自分たちの地域で作った電力を供給しているという事例もあります。再生可能エネルギーに対して関心が低い人もふるさと納税で関心を持つきっかけにもなります。やろうと思えばまだまだ可能性がありますので環境計画課もこういった事例を集めつつ、地域新電力に対する取り組みの支援をしていきたいと考えています。

(次のページに続く)