生分解性プラスチックは
海洋プラスチック問題の救世主となるか

7月29日 株式会社三菱総合研究所がメディア意見交換会を開催し、経営イノベーション本部事業戦略グループ研究員 舟橋龍之介氏が「生分解性プラスチックは海洋プラスチック問題の救世主となるか」と題してプレゼンテーションを行った。ここでは、その内容を振り返りながら、生分解性プラスチックと海洋プラスチック問題の今後を考えていく。

生分解性が期待されるプラスチック

 洋服から自動車、建設資材まで、ほぼ私たちの生活のあらゆる場面で利用されているプラスチック。しかし、プラスチックの多くは「使い捨て」されており、製品としての寿命は短い。手軽に使える分、手軽に捨てられてしまうのもプラスチックの特徴と言える。
 そして、環境中に流出したほとんどのプラスチックの最終的に行きつく場所が「海」となる。河川は上流から下流へ様々なものを運ぶ。そこには木片や紙類などのように、自然分解されるものもあるが、プラスチックの場合はそのまま残り続ける。
 ダボス会議で知られる世界経済フォーラムは、2050年にはプラスチック生産量はさらに約4倍となり、それに応じた海洋へのプラスチック流出の拡大により、「海洋プラスチックごみの量が海にいる魚を上回る」というショッキングな予測を発表している。
そういった中で脚光を浴びているのが、プラスチックが自然の中で分解する「生分解性」だ。生分解性とは、高分子化合物などが土中や水中の微生物によって二酸化炭素と水に完全に分解される性質であること。果たして生分解性プラスチックは海洋プラスチック問題の救世主となるだろうか。

プラスチックは微細化しても分解されない

 舟橋氏はプレゼンテーションの冒頭で樹木とプラスチックの根本的な違いに言及した。樹木には、自然界の至るところにそれを分解する酵素が存在する。しかし、プラスチックには存在しない。確かにプラスチック製品は、捨てられればいつまでも原型のままでは存続しない。プラスチックのパッケージもビニール袋も雨風に晒される中でボロボロに破壊され、やがて粉々になる。しかし、それは分解ではなく、微細化に過ぎない。有害物質を残したまま微細化されたプラスチックは、やがて5mm以下のプラスチック粒子であるマイクロプラスチックとなり、生態系などに悪影響を与えていく可能性がある。
 ではマイクロプラスチックの生成を抑制するためには、何が求められるだろうか。まずはプラスチックを適切に回収・処分することが基本路線となる。その上で自然界に流出せざるを得ないプラスチックには生分解性を付与することが必要となってくる。

対応策が異なる耐久財と非耐久財

 舟橋氏はここで一旦、生分解性の基本の確認を行うため、3つの問いを提示した。
 ①すべてのプラスチックに生分解性を付与する必要はあるか。②植物から作られたプラスチックがすべて生分解性プラスチックと言えるのか。③すべての生分解性プラスチックが海洋で分解されるのか。
 という3点だ。それぞれが多くの人間の誤解しがちなポイントとなるので基本を確認しておく意味で適切な問いかけとなるだろう。
 まず、①に対し、すべてのプラスチックに生分解性を付与する必要はないと舟橋氏は話す。使用年数が長い耐久財に生分解性があれば、その過程で逆に様々な問題が生じうる。そのため、従来のプラスチックを使用し、適切に回収・処分することが耐久財の対応策となる。回収としては、家電製品、医療機器などのリサイクル、焼却処分を引き続き実施。途上国においては従来のプラスチック製品のリサイクルや焼却処分の促進が課題なるだろう。
 非耐久財においては、回収が困難な釣り糸や漁網などには生分解性の付与が求められる。また生態系に悪影響がない場合、マルチフィルム等、便益に応じて生分解性を付与していくことが適切だと話す。
 次に②では、植物から作られたプラスチックは、すべて生分解性プラスチックとは言えないとのこと。例えば、天然資源由来のポリエチレンの分子構造は石油由来と同一であり、生分解性はない。つまり、原料と生分解性の有無は別の観点であり、石油由来でも天然資源由来でも、生分解性があれば生分解性プラスチックとなると述べる。
さらに③では、すべての生分解性プラスチックが海洋で分解されるわけではなく、生分解性プラスチックの種類により、分解される環境は異なる。また、すべての生分解性プラスチックが海洋で分解される必要はないとも舟橋氏はつけ加える。
微生物が植物油を摂取し、ポリマーとして体内に蓄えたものを取り出した、植物由来材料であるPHBHは、有機物を微生物の働きで分解させて堆肥にする処理方法であるコンポスト(高温多湿)に加え、土壌環境、水環境で分解する。
一方、バイオPBSは、現時点では生分解性プラスチックでありながら水環境では分解されにくい。またPLA樹脂は、およそ20年近く前に開発された植物由来のプラスチック素材だが、土壌環境や水環境では分解されにくいとのことだ。

対応策が異なる耐久財と非耐久財

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