「消滅可能性」から「持続発展」へ。
“逆転劇”を演じる未来都市 東京都豊島区

  • 7月17日、内閣府より、SDGsへの優れた取り組みを行う自治体として「SDGs未来都市」に選定された豊島区。その実現戦略推進事業が「自治体SDGsモデル事業」にも選ばれた。ここでは東京都初となるダブル選定の背景や目指す方向性などについて豊島区企画課担当係長の池田高志氏と同課担当立原直樹氏に伺った。

    アート・カルチャーの豊かな風土を持つ区

     豊島区は2014年、日本創生会議によって東京23区で唯一「消滅可能性都市」に指摘された。1日の乗降客が270万人にもなる日本屈指のビッグターミナル「池袋」駅を抱え、当時は人口27万人に達し、さらに増加傾向にあった同区。今後の発展を疑う者は少なかっただろう。しかし与えられたのは、この不名誉な肩書だった。その理由は、少子高齢化や人口流出によって20代~30代の若い女性が半減し、人口を維持することができないからだという。
     それを契機に打ち出されたのが今回の「SDGs未来都市」の軸となる『国際アート・カルチャー都市』づくりだった。
     豊島区は世界最大級のパイプオルガンを有するクラシック専用の大ホールなどを有する東京芸術劇場を池袋駅西口に持つ。また日本のアニメやマンガを愛する世界の乙女たちが憧れる「乙女ロード」、さらに昭和を代表するマンガ家たちが若手時代に暮らした木造2階建てのアパートを忠実に再現した「豊島区立トキワ荘マンガミュージアム」は、マンガの聖地となっている。
     また、かつてこの区には、池袋モンパルナスと呼ばれる芸術家たちの集うアトリエ村があり、雑司が谷界隈には多くの文士が住んでいた。同区がアートやカルチャーを標榜する土壌は、脈々と育まれてきたと言えるだろう。

    目指す都市像とSDGsの理念が一致

     国際アート・カルチャー都市構想とは、そういった舞台芸術というメインカルチャーやマンガ・アニメなどサブカルチャーといった多様な文化資源を有する豊島区の強みを最大限に活かしながら、安全・安心な人間優先の都市空間の整備を進め、表現の舞台として開放し、世界からアート・カルチャーの魅力で人や産業を惹きつけ、持続発展する都市づくりを目指すもの。そのコンセプトは、“まち全体が舞台の誰もが主役になれる劇場都市”。豊島区のSDGs未来都市計画には2030年のあるべき姿として①世界とつながり、人々が集まるまち②多様な文化と出会いが生まれる劇場都市③区民一丸となった、安全・安心で人間優先のまち④みんなが主役の、文化とともに発展する環境都市という4つのゴールが描かれている。
     「2015年9月にSDGsが国連で採択される前から、国際アート・カルチャー都市構想に基づき、持続発展するまちづくりを行ってきました。SDGsの “誰一人取り残さない”という理念を、豊島区では“誰もが主役になれる”というアプローチで実現したい」と池田氏は話す。

    「東アジア文化都市」に選出され、国際文化都市へ

     その都市構想は、2019年には国家的文化交流事業である「東アジア文化都市」の選出という成果を得、中国・西安市、韓国・仁川広域市と1年間の文化交流事業を行うなど国際文化都市としての歩みを進めた。それは、国際アート・カルチャー都市構想の「国際」部分に説得力を持たせる。
     この文化交流事業で特筆すべき点は行政間の交流にとどまらず、より多くの人々を巻き込んだところにもある。実行委員会が100名規模、推進協議会という区民が加わる組織では1000人を越えた。
     さらに同区は、年会費を負担し、国際アート・カルチャー都市の担い手となる国際アート・カルチャー特命大使の制度を設け、広く区民から募集。1000名を越える大応援団が誕生した。このことで行政と民間が一体となってまちづくりをおこなう「オールとしま」の土壌が確固としたものになっていった。
     「さらに特徴的なのは、文化というソフト面に留まらず、この機会にまちづくりというハード面でも力を注いだ点にあります。たとえば豊島区旧庁舎跡地及び豊島公会堂跡地には8つの劇場を備える新複合商業施設「ハレザ(Hareza) 池袋」を建設し、西口公園にはフルオーケストラが演奏可能な野外劇場を整備するなど23のまちづくり事業を並行して進めてきました」と立原氏は話す。

  • “マンガの聖地としま”の発信拠点となる 豊島区立トキワ荘マンガミュージアム

    “マンガの聖地としま”の発信拠点となる
    豊島区立トキワ荘マンガミュージアム

    ・8つの劇場を備える新複合商業施設「ハレザ(Hareza) 池袋」

    ・8つの劇場を備える新複合商業施設「ハレザ(Hareza) 池袋」

    フルオーケストラが演奏可能な野外劇場と東京芸術劇場

    フルオーケストラが演奏可能な野外劇場と東京芸術劇場

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