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私たちの暮らしの中から世界変革への行動を起こす
イオン株式会社

食品トレー持参という行動が循環型社会につながる

――レジ袋の有料化だけではなく、食品トレーなどの回収ボックスを店頭に設置され、お客さまは洗ってきれいにしたものを店頭に持参されています。こういったお客さまとともに環境保全や循環型社会の推進に取り組む意義は、どのようなところにあるとお考えでしょうか。

鈴木:循環型社会の推進にお客さま自身が関わっていることを実感していくところに意義があると考えます。
 資源の回収頻度の少ない自治体にある店舗に資源回収ボックスを設け、リサイクルを進めることからスタートし、こちらも取り組みはじめて約30年になります。イオンの店舗では食品トレーのほか、アルミ缶、紙パック、ペットボトルの回収も行っています。回収したものは、イオンのブランド「トップバリュ」の原料の一部に使用し再商品化※するなど資源循環のモデルをつくりあげています。食品トレーの約8割がリサイクルトレーに変わっていますが、ここにもお客さまの理解と協力が大切になってきます。
 わざわざ洗った状態でご持参いただくのは、より良いリサイクルのためであり手間はかかりますがその行動によってバージンのトレーではなく、環境に配慮したものを使えるようになるとお客さまに呼びかけて賛同を得ています。
※牛乳パックを30%、古紙を70%使用したトイレットペーパー、再生アルミ缶を100%使用した換気扇カバーなどを「トップバリュ」で販売しています。

プラスチックは持続可能な利用が重要

鈴木:お客さまには店頭まで持参していただく。そして私たちは回収したものをリサイクルして使用する。どちらも環境を守る行動になります。この2つが車の両輪のようにいっしょになって進んでいくことが望まれているのではないでしょうか。
 今回のコロナ禍では、感染症防止の視点からこれまでバラ売りしていたものを個包装にするなど、プラスチックの使用量は一時的には増えた可能性があります。
 プラスチックの利便性や衛生面は評価しつつ、どうすれば持続可能な利用になるかが、今後も鍵になり、それを担うのが再利用だと思っています。
 新型コロナウイルス感染症拡大防止への対応として、イオンの防疫の誓い(イオン新型コロナウイルス防疫プロトコル)をコーポレートサイトで提示し、お客さまにもご協力いただきながら安全・安心なお買い物をしていただけるよう努めています。

レジ袋の販売収益を地域の環境保全に

――レジ袋の無料配布を終了した店舗におけるレジ袋の販売収益※を、各地域の自治体等に寄付されています。
 そこに込められたイオンの思いはどのようなものでしょうか。

鈴木:収益は地域と一体になった活動となるよう、店舗が立地するそれぞれの自治体に寄付しています。
 有料のレジ袋自体がバイオマス配合の環境配慮素材ですし、その収益も地域の環境保全活動に役立てていただいています。レジ袋を購入されたお客さまも環境保全活動に参加することができ、収益金で地域の環境が改善するなど普段のくらしの中でその効果を知ってもらう機会を増やすことができます。
 自治体ごとの寄付となっていますので金額の大小はありますが、地域に還元され、地域がより良く変わることで、環境に対する意識はより高まるのではないでしょうか。
※レジ袋の販売価格(税抜き)から原価を差し引いた金額
※2019年度の販売収益金は約1億3,999万円

新たな循環型モデルを構築

――世界では欧州を中心にアフターコロナ社会を目指し、環境と調和した経済・社会の復興「緑の回復」(グリーン・リカバリー)に着手し始めています。経済の復興と環境はどのように調和していくことが望ましいとお考えでしょうか。

鈴木:新型コロナウイルス感染症は多くの人命を奪いましたし、世界経済にも深刻なダメージを与えました。
 その上で今まで漠然と考えていた健康、安全・安心をリアルに早いタイミングでくらしに実現していく契機となったのではないでしょうか。
 本当に人々が健康で安全・安心にくらしていくために必要なのは、グリーン・リカバリーであり、その奥底にあるのは持続可能な社会に他なりません。そのために具体的な行動となる循環型社会、循環型経済への移行を進めなければなりません。しかし、そこにはコストがかかります。様々な商品を循環させるのではなくバージンでつくったほうが経済的な場合もあるでしょう。
 そういった課題を克服し、使い捨てから資源を大切にする方向へ転換するには、それを支える政策や仕組みが求められています。
 そのためにイオンは循環型経済モデルをつくり、サステナビリティ経営のリーディングカンパニーとしてあらゆるステークホルダーを巻き込み、持続可能な社会にしていくための仕組みを盛り込む計画を策定中です。
 社会全体が大きく変化する今だからこそ、その変化を先取りして、果敢にチャレンジする。そして、これからの時代を、地域の皆さまと一緒につくりあげたいと考えています。

―― 持続可能な社会に向かって世界を変革していく行動。それは特別なことではなく、実は日々のくらしの中にある。そういったことを生活者に実感していただくことも企業の大切な使命かも知れませんね。
本日はありがとうございました。

イオン株式会社 環境・社会貢献部 部長 鈴木 隆博氏

イオン株式会社
環境・社会貢献部 部長 鈴木 隆博 氏

SDGsの項目との関わりを考えるうえで、ワークショップが非常に有効と考えています。

ジミー大西さんデザイン柄のマイバッグを販売

 イオンと吉本興業は、プラスチック製レジ袋の削減と、資源を使い捨てにしないライフスタイルに向けたメッセージを発信する『イオン×よしもと みんなで #マイバッグ キャンペーン 』の一環として、2020年7月に、吉本興業所属のタレントで、画家としてもグローバルな活動を続けるジミー大西さんによるデザイン柄の「トップバリュ リサイクル原料を使ったマイバッグ」 を発売。マイバッグの柄は、キャンペーンの主旨に賛同したジミー大西さんが新作デザインとして描いたもので、作品タイトルは「朝の光」となる。
 なお、本マイバッグの売上の10%は、公益財団法人イオン環境財団に寄付し、同財団を通じて植樹をはじめ豊かな地球環境を守る活動に役立てられる。

ジミー大西さん描き下ろしコラボマイバック

イオン新型コロナウイルス防疫プロトコルを発表

 イオンは6月30日、新型コロナウイルス感染拡大防止のため、防疫対策の基準などを示した 「イオン新型コロナウイルス防疫プロトコル」※1 を制定、発表した。
 本プロトコルは、防疫対策を一時的な取り組みではなく継続的に実行していくことで、防疫が生活の一部となる社会を実現し、お客さま及び従業員の健康と生活を守り、お客さまとともに地域社会の「安全・安心」な生活を守ることを目的にしている。
 本プロトコルは、これまでに取り組んだ防疫対策を明確な基準とすることで、継続して従業員の防疫教育やお客さまへの周知に活かすべく、3名の防疫に関する専門家※2の監修を加え作成。イオンが取り組む事項として、①従業員からの感染リスク ②施設内での飛沫感染、接触感染リスクから防ぐ対策基準を示すとともに、お客さまへの感染防止策への協力のお願いを示している。また、イオンが展開する各国の従業員への教育及びお客さまへの周知に活用するため、英語、中国語でも作成している。

※1 本プロトコルは随時改訂を行い、2020年12月までを当面の期間として制定。
※2 世界保健機関(WHO)食品安全・人畜共通感染症前部長、イオン㈱アドバイザー 宮城島 一明氏/東京理科大学薬学部教授 堀口逸子氏/国際医療福祉大学医学部公衆衛生学教授 和田 耕治氏

感染症拡大防止への対応