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SDGsの浸透を楽しさで加速する
ANAホールディングス株式会社

 企業がその達成に向けて取り組みを加速するSDGs。その中でまず課題になるのはいかにして浸透度を高めていくかになる。そこで様々な角度からSDGsの活動を進めるANAホールディングスを訪問。
 ワークショップを通してSDGsの浸透を推進するCSR推進部 スタッフアドバイザー 客室乗務員オルシーノ美穂氏に話を伺った。

乗客と接する場を活かす活動

 様々な調査結果を見ると日本におけるSDGsの認知度はまだまだ低い。そういった中で
CSR活動に力を注ぐ多くの企業は、17の目標達成への活動を展開しながら浸透にも取り組んでいる。それはANAホールディングスも同じだ。
 同社の活動は特徴的なのは、乗客と接する機会を持つ航空会社の機能を活かしているところにあると言えるだろう。
「SDGs浸透への取り組みとしては社員のSDGバッジの着用が挙げられます。特にフロントラインの社員はお客様と話す機会が多く、また社員も積極的に勉強していく意味でも浸透から普及という両面から9月30日までバッジを着用するようにしました。また機内ではSDGsに関連する動画も10月末まで上映しています」とルシーノ美穂氏は話す。

カードゲームでSDGsへの興味を喚起

 そう話す同氏が今、最も注力しているのがワークショップの活用だ。
「弊社の社員がSDGsのそれぞれの項目と自分たちとの関わりを考える上では今、実施しているワークショップが非常に有効と考えています。
 このワークショップはSDGsとは何かという導入から入り、その成り立ち、また今の取り組みが、17の目標達成とどうつながっていくのかなどを説明していきます」
 ただ、そこで苦心しているのは、皆が興味や関心を持ってもらうこと。そのために活用しているがSDGsのカードゲームだ。
 これは金沢工業大学が開発したもので、トレードオフカードとリソースカードの二種類のカードにより構成されているのが特徴となる。
 トレードオフカードではSDGsの17の各ゴールにおいて何かを得ることで別の何かが失われるというトレードオフの問題が描かれ、リソースカードには問題解決のために活用可能なAIやロボットなどの技術や製品、サービス等のリソースが描かれている。
 このゲームでは参加者全員に同じ枚数のリソースカードを配布。ファシリテーターにより提示されたトレードオフカードに対して、リソースカードを使ってチームで解決策を考え、アイデアをまとめていくものとなり、肩の力を抜きながら、自由に考えていく楽しさが魅力となっている。

楽しさが、大切さを知るきっかけに

 「難しい説明はなるべくサッと流し、たとえば11の目標の『住み続けられるまちづくりを』というゴールであれば、これを実現できるアイデアを自由に出しあった後に、ではANAホールディングスというグループで何ができるかを考えてもらう方向に持っていくようにしています
 ANAホールディングスは、グループ各部署で携わっている業務はちがうのですが、このワークショップでは、まずは『運ぶ、作る、捨てる、買う』というところを基点にして、そのまわりにはどういうプラスやマイナスがあるかといったことを書き出し、最終的にSDGsのゴールに着地していくようにしています。
 大変に重いテーマにも関わらず、皆さん、とても楽しんでいる印象があります。こういったワークショップは毎回2~30名の社員を集めて実施していますが、『SDGsのことがよくわかった』という声を頂いたり、『自分の仕事がSDGsと繋がっていた』という喜びを伝えてくれる社員もいます。
 また今後、自分たちで何ができるか、ということも相談される場合もあるのですが、これもしっかりとSDGsを捉えてもらっている表れだと実感しています」。
 同氏が毎回のワークショップで強調するのは、自然も経済も豊かな日本と砂漠化が進む地域や貧困にあえぐ国々とは繋り、SDGsの達成を自分ごととして捉える必要があることだ。そのためにこのカードゲームは、アイデアを皆で考え、楽しさを共有することでSDGsに主体的に関わる大切さを知るキッカケになっている。
 「特に若い社員はアイデア出しが上手です。カードゲームで提示する内容が突拍子もないほどユニークなのですが、そこがとても大事だと思います」
同氏は現在、全国のANAの事業所を訪れる東奔西走の日々を過ごし、ワークショップの予定は一杯の状況。しかし、その要請は後を絶たない状況にあるとのことだ。
 SDGsのゴールは2030年。残された時間はそう多くない。だからこそ今、その取り組みを加速していく上で鍵となるのは、より多くの人を巻き込んでいく楽しさに他ならないだろう。

CSR推進部 スタッフアドバイザー 客室乗務員 オルシーノ 美穂 氏

CSR推進部 スタッフアドバイザー 客室乗務員
オルシーノ 美穂 氏

より詳しい内容が、動画でご覧いただけます。

インタビュー映像

SDGsの項目との関わりを考えるうえで、ワークショップが非常に有効と考えています。

SDGsの項目との関わりを考えるうえで、
ワークショップが非常に有効と考えています。

ワークショップで使われる資料

ワークショップで使われる資料

ワークショップで使われるカードゲーム(金沢工業大学 作)

ワークショップで使われるカードゲーム(金沢工業大学 作)