HASEKO-KUMA HALL オープニング記者会見
~「知恵の巣箱」をいくつも持つ多様性に富んだ空間~

 1月30日 国立大学法人東京大学工学部 「HASEKO-KUMA HALL」にてオープニング記者会見が行われ、東京大学から大久保達也氏、隈研吾氏、株式会社長谷工コーポレーションから池上一夫氏が挨拶した。
 続いて当ホールの施設概要と運営方針について同大学広報室長 田畑仁氏が説明。さらに代表出展者が登壇し、物理工学専攻 助教の牛島一朗氏が「光格子時計」について、航空宇宙工学 准教授 船瀬龍氏が「超小型衛星」についてプレゼンテーションを行った。
 ここでは三氏の挨拶の要旨を紹介する

世界を牽引する知のプロフェッショナルが
羽ばたくホールへ

東京大学大学院工学系研究科長・工学部長
大久保達也 氏

長谷工コーポレーションの設計施工と隈教授の空間デザイン

 この度、長谷工コーポレーションより、設計施工を寄付という形で受けることで工学部11号館の「講堂」及び「ラウンジ」のリノベーション工事を進め、無事竣工し、HASEKO-KUMA HALL(正式名称:東京大学工学部11号館HASEKO-KUMA HALL)として開設する運びとなった。その空間デザイン・設計は2020東京オリンピック・パラリンピックのメイン会場である『新国立競技場』の設計者として世界的に著名な本学大学院工学系研究科建築学専攻の隈研吾教授にお願いした。

講堂もラウンジも様々に活用

 こちらの講堂は様々な会議やシンポジウム、講習会、また各種会合の会場として使うことが予定されている。またラウンジは展示会や展覧会などの各種学術イベントに使用し、懇談会などのサロンとして、夜間はドリンクを飲みながら会話を楽しめる。
 また講堂とラウンジは地域活性化の場としても広く活用し、東京大学及び工学研究科が社会と連携していく上で重要な場にしていきたい。
国連は2030年までに解決すべき国際目標として「持続可能な開発目標(SDGs)」を掲げている。この17のゴールに盛り込まれている課題はいずれも工学と深く関連するものとなっている。これらの社会課題を解決し、未来を切り拓き、世界を牽引していく「知のプロフェッショナル」がこのホールから大いに羽ばたいていくことを期待している。

学生がより安心して快適に学べ、
憩うことのできる空間づくり

株式会社長谷工コーポレーション取締役専務執行役員
池上一夫 氏

学生育成の中で生まれた出会い

本日、私のほうから東京大学様への寄付にいたった経緯と工事の概要に説明したい。弊社はこれまでも内閣府や文科省、経団連が推進している理工系学生のための職場体験「リコチャレ」に参画し、建設現場体験や設計体験を提供してきた。また一昨年、多摩市に「長谷工マンションミュージアム」を開設し、多くの学生をお招きするなど応援活動を積極的に実施してきた。
 また今から遡ること13年前、2007年より設計職を目指す学生を対象に「長谷工住まいのデザインコンペティション」を開催。その審査委員長を隈先生にお願いするなど長いお付き合いの中、今回の話を頂戴した。

大規模改修とリフォーム工事のノウハウを生かす

 この工事は最も得意なリノベーション工事の提供という形で貢献でき、また改修工事の実績づくりの貴重な機会となるものとしてこの寄付を決めさせていただいた。
 次に工事については長谷工コーポレーションとグループ会社である長谷工リフォームとの共同工事で行った。特に注力したポイントは2点となる。1点目はキャンパスの利用者にご迷惑をかけないこと。もう1点は改修の安全性、快適性、機能性を弊社・グループの技術を駆使して格段に向上させるということだった。
 1点目について長谷工リフォームはお客様が住んでいるマンションの大規模改修とリフォームの工事を行っている。工事期間中もこの11号館は3階から上のフロアと地下では授業が継続されており、まさに居住者のいる工事と同じ状態だった。エレベーター動線の分離確保や上下階での騒音対策、粉塵対策など居住者が普段通りの生活をしている状態での工事は長谷工リフォームが最も得意としている工事であり、それを普段通り実践することで学生の負担を最小限にできたのではないかと考えている。

確かな裏付けで安全性を担保

 2点目の安全性、快適性、機能性については、天井にボックスを、ラウンジにおいても展示ボックスが壁面に設置してある。この工事において弊社の技術研究所では地震の際も落下しないよう、何度も実験、検証し、確かな裏付けをもって施工に取り掛かり、安全性を担保している。また階段状の講堂では改修前は急こう配になっていたが、それをゆるやかにし、イスに座ったときも学生が後ろを通れるようにゆったりとしたスペースを確保している。空調については暖房設備を床下に設け、快適性を高めた。そして最後にエントランスまわりの工事では開放性を出す目的で一部鉄筋コンクリートの壁を撤去し、サッシに改修した。
 最後になりますが隈先生に素晴らしいデザインをしていただき、学生がより安心して快適に学べ、憩うことができる空間づくりを念頭にグループ力を生かして忠実にそれを形にした。本ホールが東京大学の最先端の学術研究、教育活動を広く国内外に発信し、国際社会との連携を密にはかるシンボリックな場となることを心より祈念してやまない。

木箱のあるヒューマンで機能的な講堂

東京大学大学院工学系研究科建築学専攻教授
隈 研吾 氏

木の素材を全面的に使った空間

 リノベーションに当たってまず考えたのは、基本性能をあげること。それは工学系の授業では、非常に高いプロジェクションの性能が要求されるため、その性能や音響機能を完璧に満たすものにした。
 次に親しみやすいホールにするということ。このホールが地域に対しても開かれた存在となり、親しみや温もりを感じるよう、木の素材を全面的に使うということを考えた。木を使うことは音響的にも非常に効果があり、たとえば天井のボックスは音響的にも音を拡散して全体的に音を聴きやすい環境をつくっている。

森の中にいるような講堂に

 またラウンジとの連動ということも重視した。もともとラウンジのスペースはあったが、ラウンジとホールとの接続がスムーズでなかった。しかし、これからの地域連携イベントでは、ラウンジとホールをいっしょに使うことが重要になるため連動しやすいようなデザインを考えた。そのためにホールではボックスを音響・照明ボックスとして用いると同時に、ラウンジではミュージアムの展示ケースとして設置している。
 このホールはレクチャーホールと同時に交流ができるラウンジであり、さらに世界最先端の研究を展示するミュージアムである。つまりホール、ラウンジ、ミュージアムという3つの機能を併せ持ったものにすることが設計の基本にあった。それらを結ぶボキャブラリーが「木の箱」であり、我々は「知恵の巣箱」と呼んできた。
 木漏れ日の注ぐ森の中にいるような空間には、そういった巣箱がたくさんある。そこには未来に育っていく研究もあるし、もう十分な親鳥もいるかもしれない。
 多様性の空間は、これからの大学のキャンパスに求められている。その一つとしてお役に立てたことに感謝している。

ホールの様子

ホールの様子

より詳しい内容が、動画でご覧いただけます。

記者会見取材映像

東京大学大学院 大久保達也 氏

東京大学大学院 大久保達也 氏

株式会社長谷工コーポレーション 池上一夫 氏

株式会社長谷工コーポレーション 池上一夫 氏

東京大学大学院 隈研吾 氏

東京大学大学院 隈研吾 氏

ラウンジの様子

ラウンジの様子

ラウンジの様子

ラウンジの様子

映像が投影された天井の様子

映像が投影された天井の様子