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〈東レの取り組み〉
モノづくりからコトづくりへ
次世代イノベーションを創出する未来創造研究センター (東レ株式会社)

 東レ株式会社(以下「東レ」)は、2019年12月に創業の地である滋賀事業場に新たな研究拠点として、未来創造研究センターを設立。1月24日にメディア向けの見学会を開催した。

5つの研究所とイノベーション・ハブ機能を持つ新拠点

 同センターは、未来創造型研究の中枢として革新材料・デバイス・システムのアイデアを創出する融合研究棟と、そのアイデアを基に試作・評価・実証を推進する実証研究棟の2棟から構成。先端材料研究所、地球環境研究所、電子情報材料研究所、フィルム研究所、繊維研究所の5つの研究所が様々な部署との連携・融合の強化を図っている。
 さらに国際会議場、展示・デモエリア、オープンラボなどのイノベーション・ハブ機能を有し、多様な分野のアカデミアや重要パートナーとの交流・連携・技術融合ができる戦略的オープンイノベーションの場ともなっている。

日本流のイノベーションを軸とした研究・技術開発を重視

 見学会ではまず阿部晃一代表取締役副社長技術センター所長(CTO)が挨拶。大要、次のように話した。
 東レの研究・技術開発の基本思想には日本流イノベーションの創出にある。日本ということに着眼すれば一つのことを粘り強く黙々とやり続けている日本人の気質は、先の見えない基礎研究に適している。「和をもって尊し」とする特質も総合力を発揮しやすい。
 日本で生まれた東レの研究・技術開発の強みは、基礎研究を重視する風土であり、時流に迎合せず、我慢強く、技術の極限を追求するDNA であると考えている。
 当社は、海外にも多くの技術開発拠点を持っているが、日本流イノベーションを軸とした研究・技術開発に重みを置き、基礎研究・先端開発は日本で、現地ニーズに合った商品開発は世界各地で行うことを基本方針としている。

先端材料が、世界を牽引する基幹産業を創出

 東レの事業の中核をなす先端材料は、そのほとんどが最終商品の中に隠れてしまうが、歴史を振り返れば材料の発明・開発があったからこそ、産業が成り立っている。
 たとえば合成高分子の発明によって、合成繊維やプラスチック産業などが成り立ち、あるいは半導体の発明がトランジスタ、LSI、そして現在のエレクトロニクス産業を育んできた。
 そういった東レの先端材料は、機能別の組織を技術センターとしてCTOが統括する研究・技術開発体制から生まれてきた。この体制では各研究所や技術開発、生産部署同士が分断されていないため、各分野の専門家が集結し、技術融合を起こしやすく、一つの材料でいろいろな事業分野に貢献していくことができる。

材料の革新が地球環境問題へのソリューションへ

 東レは今までも歴史の節目毎に基礎研究を担う研究所を設立してきた。そして、今回は2016年の創立90周年記念事業の一環として、 昨年12月に未来創造研究センターを開所した。
 このセンターでは、短期的な成果を求めるのではなく、材料研究を、さらに深化・飛躍させたい。また日本流イノベーションでグローバルに展開できる開発を行い、未来社会にソリューションを提供する拠点としていきたい。様々な地球環境問題に対しても材料の革新なくして本質的なソリューションはないと確信している。

「素材には社会を変える力がある」を信念に研究体制を構築

 続いて挨拶に立った恒川哲也常務取締役研究本部長は、研究本部の概要と研究体制を紹介。
事業拡大に向けて国内で基礎研究を担う9つの研究所をヘッドクオーターとしたグローバルな体制を構築し、「素材には社会を変える力がある」の信念のもと、「東レグループ サステナビリティ・ビジョン」の実現に向けた研究をおこなっていると語った。
 そして、1956年に中央研究所を設立し、「創造への開拓者」として多くの研究成果を残してきた意義ある地に、5つの研究所を集結し、革新機能材料を創出する研究拠点として未来創造研究センターが開設されたと述べた。

持続的社会の実現に必要な資源循環システムにも注力

 最後に真壁芳樹理事先端材料研究所所長が、同センターのコンセプトを説明。持続型未来社会のソリューションを考え、コンピュータサイエンス、社会科学、人文科学などの異分野領域での視点を取り入れ、それを踏まえた未来創造型の次世代研究開発を行う場がこのセンターであると述べ、新たな価値を創造する「協創」の場として従来の延長線上にはない研究を実施していきたいと話した。
 また研究テーマとしては革新分離、革新医療、IoTセンシングを推進。さらにコンピュータサイエンスとして持続的発展可能な社会、安全・安心・快適な生活、高速・高効率なシステムなど新製品・新事業を持続的に行いながら、未来社会に貢献する新材料・デバイス、サービスの創出により、事業拡大を目指したいと述べた。
 さらに革新分離膜材料の研究ビジョンでは、CO2の高排出や化石燃料の枯渇といった現状課題に対し、当社独自の革新分離膜システムの創出により天然ガスや水素の生成コストを大幅に削減。従来不可能であった電池からのリチウム回収にも挑戦し、カーボンリサイクルや水素社会、リチウムリサイクルなど持続的社会の実現に必要な資源循環システムを構築し、グリーンイノベーション分野に貢献したいと話した。
 この後に行われた質疑応答では、阿部副社長を中心に、昔の大学の研究室では個の重視であったことに対し、東レは昔から技術融合に取り組んでおり、同センターにおいても融合研究をさらに進めることを強調。総合力を強みにした新たな研究・技術開発拠点であることなどが話された。また環境問題やグローバル競争が激化する中で東レのDNAである粘り強い、超継続を継承した長期視点に立った基礎研究を武器にしていきたいと抱負を述べた。

東レ株式会社 未来創造研究センター(外観)

東レ株式会社 未来創造研究センター(外観)

より詳しい内容が、動画でご覧いただけます。

見学会取材映像

阿部晃一 代表取締役副社長 技術センター所長(CTO)

阿部晃一 代表取締役副社長 技術センター所長(CTO)

恒川哲也 常務取締役研究本部長

恒川哲也 常務取締役研究本部長

真壁芳樹 理事 先端材料研究所所長

真壁芳樹 理事 先端材料研究所所長

質疑応答の様子

質疑応答の様子

館内の様子

館内の様子