2050年カーボンニュートラルの実現に向けて グローバルリーダー・カンパニー CDP Aリスト受賞企業が代表スピーチ Part1

 環境情報開示を推進する国際NGOのCDPは2020年12月8日、「気候変動」「ウォーター(水)」「フォレスト(森林)」の3分野での2020年度Aリスト入り企業を公表。そして2021年1月14日、CDPAリスト企業アワードをオンラインで開催し、Aリスト入りした各企業の代表がスピーチを行った。ここではその一部を紹介する。

■トリプルAリスト(気候変動・水セキュリティ・フォレスト)

事業活動を通じた社会課題の解決で企業が成長
不二製油グループ本社

代表取締役社長 最高経営責任者(CEO) 清水 洋史 氏

 当社は、人のためになり、世の中の役に立たなければ企業はサステナブルに成長できないとの考えから事業活動を通じた社会課題の解決に取り組んでいる。2020年にはサプライチェーンにおける森林破壊防止や児童労働撤廃に向けて中長期的なサステナブル調達コミットメントを策定・発表。パーム油においては2030年までにパーム農園までのトレーサビリティを100%にすることで森林破壊防止を、カカオについては2030年までに児童労働0を目標に児童労働撤廃に取り組むことを掲げている。これらの難しい課題に早く正面から行動することが企業の成長になるのだと信じている。

■ダブルAリスト(気候変動・水セキュリティ)

商品のライフサイクル全体で温室効果ガスの排出や水の使用量を削減
住友化学

代表取締役社長 社長執行役員 岩田 圭一 氏

 住友の事業精神に「自社の利益のみを追うのではなく、事業を通じて広く社会に貢献する」という言葉がある。当社もこのDNAを脈々と受け継ぎながら、事業展開を進め今日に至っている。2050年のカーボンニュートラルの課題に対しては世界各国で動きが加速している。当社では自社の環境貢献商品を認定する製造から廃棄まで商品のライフサイクル全体で温室効果ガスの排出や水の使用量の削減につながる製品の普及に努めてきた。今回はこうした取り組みが評価されたと捉えている。

「省・小・精」で環境配慮型商品を生み出していく
セイコーエプソン

代表取締役社長 CEO 小川 恭範 氏

 当社は諏訪湖畔に本社を置くという創業者の言葉を守り続け、自然を大切にする企業活動を継続してきた。たとえば1960年代には社内に水処理装置を設置し、厳しい自主管理基準を設けた。オゾン層破壊の問題では1988年にフロン全廃を宣言し、達成している。開発力と技術力が当社の強みと言える。そのDNAは「省・小・精」。つまり省エネを追求し、高性能のものを小さくつくり、高精度を実現する技術のすべてが環境配慮型の商品を生み出す技術となっている。今後もその技術を徹底的に磨き、体質改善を行いながら、持続可能な役割を果たそうと考えている。

これからも幸せを量産する企業活動を
トヨタ自動車

Deputy Chief Sustainability Officer (DCSO)  大塚 友美 氏

当社は「トヨタ環境チャレンジ2050」を策定し、環境問題に取り組んできた。そして工場でのCO2削減や地域別に電源構成や車の使われ方が異なる中、一貫してエコカーの普及を推進してきた。当社ではトヨタのぶれない軸を明文化したトヨタフィロソフィをつくり、そのミッションを「幸せを量産する」と定義している。これは理念においてSDGsと深く通じる。今回のコロナ禍を受けて、社長の豊田は「地球全体を俯瞰してみるホームプラネットという考え方で認められる会社になりたい」と述べているが、今後も幸せを量産する会社であるべく世界中で働くトヨタの一人ひとりが行動していきたい。

■気候変動Aリスト

「アサヒカーボン ゼロ」の達成を目指し、様々な取り組みを展開
アサヒグループホールディングス

代表取締役社長兼CEO 小路 明善 氏

 気候変動への対策としては、2050年度までにバリューチェーン全体のCO2排出量ゼロを目指すアサヒカーボン ゼロを策定し、グループ全体で取り組んでいる。その中で国内外ともに再生可能エネルギーを活用した商品の製造やラベルレス商品の展開、バイオガスを活用した燃料電池の導入など、その実現に向けて、日々様々な挑戦と革新を続けている。またCO2排出削減だけではなく、水や原材料、容器包装などの環境負荷を軽減させると共に当社独自の微生物の発酵技術を活かした環境にプラスとなるような取り組みにも力を入れている。

経営理念をベースにして、スピーディに温暖化防止策を実践
イオン

執行役 環境・社会貢献・PR・IR担当 三宅 香 氏

 イオンには「お客さまを原点に平和を追求し、人間を尊重し、地域社会に貢献する」という創業以来普遍の経営理念がある。温暖化防止への取り組みは、まさに理念である平和な社会の構築に直結するものと考えている。そのために植樹活動や買い物袋持参運動などは90年代前半から取り組んできた。2008年には「イオン温暖化防止宣言」を、2018年には2050年までにCO2ゼロを目指す「イオン脱炭素ビジョン2050」を策定している。一方で現在は店舗における省エネ施策を加速させながら、再エネ調達などの新たなモデルの開発や卒フィットをサービスの推進などを進めている。今後も脱炭素社会の実現に向けてさらにスピードアップして取り組んでいきたい。

モニタリングシステムの導入でカーボンニュートラルを加速
鹿島建設

代表取締役社長 押味 至一 氏

当社ではすべての建設現場にCO2排出量とエネルギー使用量をモニタリングできるシステムを導入した。得られたデータを分析し、スマート生産、自動施工などに活用することで飛躍的な生産性向上を追求。CO2排出量の削減を進めることを軸に事業活動におけるカーボンニュートラルの実現を目指したいと考えている。また風力やバイオマス、水素を活用した発電施設の計画や施工、維持管理を通して、再生可能エネルギーの普及を推進するとともに建物の省エネ化や低炭素建材などの使用を提案。SDGsの達成に向け、パートナーシップにもとづくオープンイノベーションを進めていく。

「コーセー サステナビリティ プラン」を着実に実践
コーセー

代表取締役社長 小林 一俊 氏

 当社は2020年4月サステナビリティに関する取り組みと目標をまとめたコーセー サステナビリティ プランを発表した。より一層意欲的な取り組みと積極的な情報開示を通じて、脱炭素社会の実現に貢献していく。直近の事例として2021年1月よりマザー工場であるコーセー群馬工場においてすべての電力を再生可能エネルギーへと切り替えた。これは2018年度を基準にすると当社グループの温室効果ガス排出量の約23%削減に相当する。今後も美しい知恵で新しい価値を創造してきた美の創造企業として、誰もが安心して暮らせる健やかな未来の地球を実現に貢献していきたい。

環境配慮技術の活用と技術革新で未来に受け継がれる国土づくり
大成建設

代表取締役社長 相川 善郎氏

 当社は「人がいきいきとする環境を創造する」というグループ理念のもと、建設事業を中核とした企業活動を通じて、良質な社会資本の建設に取り組んできた。2018年には気候変動、資源の循環利用、自然共生、環境汚染などの環境問題を踏まえて2050年の環境目標を見直し、その際掲げたCO2削減目標がSBT認定されている。そういった中で建物の設計段階から環境配慮に注力し、建物全体のエネルギー消費を削減するZEBの普及に早くから取り組んできた。今後も様々な環境配慮技術の活用と技術革新でインフラの強靭化を追求し、未来に受け継がれる国土づくりに努めたい。

未来の子たちにむけて果たすべき責任を自覚
大和ハウス工業

代表取締役社長/CEO 芳井 敬一氏

 菅総理が2050年までにカーボンニュートラルの社会を実現すると宣言した。このことによって2050年までにネットゼロというゴールが民間企業や国民の間に広く共有されたことを実感している。そういった時代の変化の中で当社も経営者として脱炭素につながる商品やサービスの提供を行い、コロナからのグリーンな復興につなげたい。2050年目標について私は次世代、何より未来の子たちにむけて果たすべき責任と考え、それを自覚しながら、様々な社会課題に対して懸命に取り組んでいきたい。

浮体式洋上風力発電など再エネ電源の拡大に取り組む
戸田建設

代表取締役社長 今井 雅則 氏

 当社ではTCFDへの賛同を表明し、気候変動に関するリスクと機会のシナリオ分析を実施している。その結果から1,5℃の世界の実現を目指すことが当社の経営においても有利であることを確認。リスク面では温暖化に伴う熱中症の増加等による建設現場の労働生産性の低下を認識し、ビジネスチャンスの面では再エネ電源の拡大に伴う土木工事の増加等を特定した。特に当社が事業化に取り組んでいる浮体式洋上風力発電に大きなチャンスがあると考えている。今後もさらにスマートで強靭なコンパクトシティに向けた事業を展開し、社会課題解決のために全力を尽くしていく。

サステナビリティを経営の中核に据え、社会活動と顧客活動を両立
ブリヂストン

取締役 代表執行役 Global CEO 石橋 秀一 氏

 当社は従来からコア事業であるタイヤ・ゴム事業において長寿命、省資源を実現する「ダントツ商品」の開発をはじめとした原材料のリデユース等に取り組んできた。2020年には2050年を見据えた環境長期目標に加え、「環境中期目標マイルストーン2030」を策定した。さらにCO2削減については2030年に2015年対比50%を目指し、2050年にはカーボンニュートラルという明確なターゲットを掲げている。チャレンジングな取り組みとはなるが、サステナビリティを経営の中核に据え、社会活動と顧客活動を両立させ、競争優位を獲得することで社会・お客様と共に持続可能な社会の実現に取り組んでいきたい。

■水セキュリティAリスト

「命を支えるプラットフォーマー」として社会課題解決に挑戦
クボタ

代表取締役社長 北尾 裕一氏

 現在、世界は未曽有の危機に直面しているが、創業当時も水を媒介としたコレラ等の伝染病が流行していた。そこで当社は安全な水を届けるために日本ではじめて水道用の鉄管の開発に着手。上水道の普及に貢献した。以来発動機や農業機械、水処理技術の開発等いつの時代も社会課題に真摯に向き合ってきた。創業130周年をむかえた年に世界はコロナ禍という危機に見舞われた。また近年は異常気象の頻発などが社会に大きな影響を与えている。今こそ当社は、命を支えるプラットフォーマーとして社会課題解決のため、さらなるイノベーションを生み出していきたいと考えている。

水処理貢献量を3倍に増加、水使用量を30%削減する取り組み
東レ

代表取締役社長 日覺 昭廣 氏

 当社は水問題が人間の健康と安全に関わる世界的な重要課題であると認識し、以前から具体的な目標を設定し、その達成に向けて着実に取り組んできた。それがこの評価となったと考えている。今、当社は2050年にむけて目指す世界とその実現にむけた課題を示した「東レグループサステナビリティビジョン」や2020年5月に策定した2030年までの長期経営ビジョン「TORAY VISION 2030」の中で安全な水の提供を東レグループが取り組むべき課題の一つとしている。この課題の実現に向け、2030年度目標として水処理技術による水処理貢献量を2013年度比で3倍に。また自社の生産活動における用水使用量を売上収益減対比の30%削減することを掲げて取り組みを推進している。

 

来賓挨拶では菅総理や小池都知事等がビデオメッセージ

 今回のアワードでは菅 義偉内閣総理大臣をはじめ、※河野太郎内閣府 内閣府特命担当大臣(規制改革、沖縄及び北方対策)、小泉 進次郎環境大臣、小池百合子東京都知事ら来賓がビデオメッセージで登場。菅総理は、昨年10月の所信表明演説で、2050年カーボンニュートラルを宣言したことにふれながら、環境対応は経済成長の制約ではなく、経済社会全体を変革し、大きな成長を生み出す原動力であることを強調。そのために環境と成長の好循環に向けて、過去に例のない2兆円の基金を創設し、野心的なイノベーションに挑戦する企業を支援していくことを訴えた。
 河野内閣府特命担当大臣は企業が再生可能エネルギーを取り入れる必要性と重要性を力説。小泉環境大臣は2050年のカーボンニュートラルを一つの内閣だけの閣議決定でとどめずに法律を改正し、そこに2050年のカーボンニュートラルを位置づけることで今後の日本の脱炭素の継続性・信頼性の担保を高めていきたいと語った。また小池東京都知事は気候危機に立ち向かう上で具体的な行動の重要性を話し、東京グリーンボンドや東京版ESGファンド、東京サステナブルファイナンスウイークについて言及した。




※肩書などは、2021年1月14日現在のものです。