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SDGsとつながりながら、グリーン購入や持続可能な購入を市民レベルに グリーン購入ネットワーク 会長 梅田 靖氏

 グリーン購入や持続可能な購入(以下、総称して「グリーン購入」とする)に率先して取り組む企業や行政機関、そして民間団体等のネットワークであるグリーン購入ネットワーク(以下GPN)。その会長を2020年4月に平尾雅彦氏から引き継ぎ、新会長に就任した梅田靖氏にインタビューし、展望や抱負などを伺った。

ライフサイクル工学の視点も活かし、グリーン購入を促進

――梅田会長は東京大学大学院工学系研究科で、エコデザインをテーマに、ライフサイクル設計や持続可能社会シナリオ設計方法論等の研究を行っています。最初に専門のライフサイクル工学とは何か、わかりやすく教えてください。

梅田:グリーン購入において、大きなウエイトを置いているのが製造業だと思います。この製造業は社会のニーズを反映して、個々人の生活様式ともつながっています。ライフサイクル工学は工業製品のライフサイクル全体という視点で、どのようにすればカーボンニュートラルやサーキュラーエコノミーが可能になるか、その実現手段を考えていく学問です。その研究成果を活かしながらGPNの発展、そしてグリーン購入の促進に貢献していきたいと考えています。

オンライン取材に応える梅田会長

オンライン取材に応える梅田会長

「つくる責任」と「つかう責任」をつなぐ結節点に

――今回新たに会長に就任されましたが、あらためてGPNの存在意義についてどのようにお考えでしょうか。

梅田:GPNは1996年に設立されました。当時は社会全体に少しずつ今日の持続可能性につながる環境問題への意識がめばえはじめ、「世の中をサステナブルな社会に変革していこう。グリーンな方向に転換していこう」という大きなムーブメントが起こりはじめていた時代です。またグリーン購入という言葉自体が新鮮で魅力的でした。そういった中でGPNが誕生しました。気がつけば2021年、あっという間に四半世紀の歴史を刻もうとしています。
 今、GPNの存在意義を考えますとSDGsとの関係が浮かび上がってきます。我々の活動は当然、そこに定められている17のすべてのゴールと関わってきますが、特に重視しなければならないのが12番目である「つくる責任 つかう責任」です。そこに描かれた持続可能な消費と生産のあるべき像――その中で「グリーン」という意義を「サステナビリティ」という視点から再確認して、アクションを起こすことがグリーン購入であり、グリーン調達になると思います。
 その観点からGPNを俯瞰しますと、業務としてグリーン購入を対象として選択していく企業から、一般市民の皆様が活動を行っている地域ネットワークなど様々なステークホルダーがまさにGPNというネットワークとして参画していることがわかります。これは、先ほどのSDGsのゴールにあった「つくる」側である企業やメーカー、それから「つかう」側である地域の人たちのネットワークをつなげる結節点の役割を果たしていると言えるのではないかと思うのです。
 その意味から、私が会長になってより一層、強めていきたいのは、SDGsとグリーン購入とのつながりです。この点について今まで以上に明確に呼びかけ、グリーン購入を市民の消費行動につなげ、普及していきたいと考えています。これが実現できるとかなり新しいステージに上がった活動になるのではないかと思っています。

プラスチック容器の新しい循環に期待

――今回で21回を迎えた「グリーン購入大賞」。そこではプラスチック資源循環特別部門が新しく設けられましたが、今後、プラスチック資源の循環においては、どういった商品やサービスが生まれてくることを期待しますか。

梅田:今までアジア諸国は、中国を中心に廃プラスチックを輸入してきた歴史がありました。しかし、それが海に排出されるごみを増やすことになり、これを是正するため、近年アジア諸国では廃プラスチックの輸入規制が次々と行われてきました。
そういった背景の中で、廃プラスチックの量を抑制していくプラスチックのリデュースが最優先課題となると思います。また、使用済のプラスチックを再利用するリユースが重要になってくるでしょう。そこから考えますと今後、多種多様な製品に再生プラスチックの視点が入ってくることになると考えています。またサービスにおいても、今後は「循環」が鍵になるのではないでしょうか。今までの「ごみを処理する」という発想ではなく、ビジネスとしてうまく成り立つような循環のサービスが、経済性を持ちながら数多く開発されていくことを私としては期待しています。
実際、プラスチック循環の分野は、まだまだ発展途上の段階にあります。たとえば使用済みのプラスチック容器のほとんどは、リサイクルされたとしてもプラスチック容器には生まれ変わってはいません。今回、リサイクルペットボトル素材で新しい飲料水のペットボトルを開発した企業が大賞を受賞しましたが、まだまだ希な事例です。この状況を打破するような新しい循環が増えることで、廃プラスチックの事情は大きく変わってくるのではないでしょうか。

新しい仕組みが個人の行動を変えていく

――今後、GPN全体の取り組みとしてどのような活動に力を注いでいきたいとお考えでしょうか。

梅田:SDGsの17の目標は、今回の新型コロナウイルスのパンデミックによりまさにそのリアリティ、重要性が高まったと考えられます。2030年達成のためにSDGsをベースにしたグリーン購入の定着を図ることが大切だと思っています。とともに2050年カーボンニュートラルの実現という点でも、再エネ電力の普及が必須課題ですので、同様に力を入れていきたい。その上で私が最も重要と捉えているのは、個人の日々の消費生活におけるグリーン購入の定着です。
 このコロナ禍で多くの人が痛感したのは、個々人の行動を変えていく難しさだったのではないでしょうか。そこから考えると個人の暮らしという次元でグリーンに対する行動へと変化させていくことも容易ではありません。しかしGPNでは、その社会的ミッションにおいて「全ての組織購入者、個人消費者をグリーンコンシューマーにする」と掲げています。一人ひとりがグリーン購入に対して意識を高めていくための取り組みがどうしても必要となってきます。
 ではそれはどうすれば可能になるか。その鍵になるのは、「共感と仕組み」だと捉えています。気候変動や環境の汚染に対する積極的な理解が共感になるでしょう。そしてそこに共感を行動に移せる仕組みがあれば、個人の生活様式は変わっていくと思うのです。
 その一つとしてGPNが進めてきたのが「エコ商品ねっと」です。グリーン購入を推進していくために国が定めた法律に「グリーン購入法」というのがあります。また「生産」から「廃棄」にわたるライフサイクル全体を通して環境への負荷が少なく、環境保全に役立つと認められた商品につけられる環境ラベルに「エコマーク」があります。それらに加えてGPNでは購入する際に環境面で考慮すべき重要な観点を、製品ごとにリストアップした「GPNグリーン購入ガイドライン」というものを設けています。
 エコ商品ねっとは、商品名などで簡単にグリーン購入法適合商品か、あるいはエコマークが表示された商品か、そしてGPNグリーン購入ガイドライン対応商品かどうかを調べられるサービスとして2014年からスタートしています。
 このサービスの良い点は、自分自身がグリーン購入をしたいという思いに対してしっかり応えられるところにあります。
 またこのエコ商品ねっとから実際の商品やサービスのHPに飛べ、より詳しい内容がわかり、そのまま購入に直結できるところもメリットになるでしょう。エコ商品ねっとにはホテルもありますので各ホテルのHPに移動し、そこで予約もできるわけです。
 これはほんの一例ですが、共感を魅力的に、あるいはスムーズに行動に移せる仕組みがあることで個人生活のレベルでグリーン購入を加速させることができると考えています。

次世代に発信する取り組みを今後も継続

――GPNの活動が若い世代へ浸透し、受け継がれていくために取り組んでいることがあれば教えてください。

梅田:多くの組織に言えることだと思いますが、GPNを支えていただいている地域ネットワークにも高齢化の波が押し寄せています。グリーン購入を若い世代に浸透させていくことは、急務と言えるでしょう。そういった点からも今回の大賞を受賞した大学の研究室が大学生の活動に焦点を当てていることはとても重要だと思います。
 また小学生を対象に、容器包装の少ない商品や環境に配慮した商品にはどういったものがあるか、また、その商品はどのくらい環境に負荷を与えているかなど様々な情報を子どもたちが学べ、考えて買い物を体験するためのワークショップなども開催してきました。小学生の皆さんが地域の店舗を訪れて、新しい視点で買い物を体験することで環境を考えるきっかけになったのではないでしょうか。
 またパーム油の生産現場における環境問題を、子どもたちといっしょに学ぶプログラムなども実施しています。こういった小学生を対象にした取り組みは子どもだけではなく、その親世代に対しても我々のメッセージを発信できるという効果も期待できると思います。しかし、次世代に対する取り組みは、これからだと思いますので今後もさらに注力していきたいと考えています。

サイバー空間と実空間で新たな購入のスタイルが生まれる

――ニューノーマル時代がさらに加速していく中で、企業や人のグリーン購入はどのような方向に変化していくとお考えでしょうか。

梅田:今回の新型コロナウイルスによる世界的な感染の中で、安全・安心に対して社会がいかに脆弱であるかがリアリティを伴って実感できました。また今まで想像することすらなかった医療崩壊の危機も経験しました。人命はもちろん、生活面、ビジネスにおいても多くの犠牲を生みました。その中でサステナビリティに対する危機意識も高まりました。
 そこで急激にスポットライトを浴びたのがオンラインだと思います。今後は現実のモノとネットワーク上のバーチャルな情報がセットになったサービスがますます脚光を浴びていくのではないでしょうか。同時に世界的な危機を経験することで自分が今、買おうとしているものがどのようにサステナビリティと関連しているか、そのストーリーをネットで追体験できるサービスなども増えていくように思います。
 たとえばコーヒー豆の購入においても、リアルな世界ではその向こうにあるフェアトレードをなかなか実感することはできません。しかしサイバー空間と融合すれば、それが可能になります。そして、体験を通して自分の購入したいコーヒー豆を選ぶことができます。そういった行動を後押しする商品が今後、増えていくと考えていますし、その支援もしていくつもりです。

――GPNの活動はSDGsの達成をはじめとして、サイバー空間と実空間が融合したソサエティ5.0といった未来像をも視野に入れたものへと広がる可能性があることがよくわかりました。本日はありがとうございました。