第五回UNEPフォーラムがオンラインで開催

「食品ロス削減への道筋~災害大国・日本における防災備蓄食品の活用について」
講演 一般社団法人食品ロス・リボーンセンター代表理事 山田英夫氏

 プログラムの最後は、一般社団法人食品ロス・リボーンセンター代表理事である山田英夫氏が「食品ロス削減への道筋~災害大国・日本における防災備蓄食品の活用について」と題して以下のように講演を行った。

膨大な食品ロスを生み出す備蓄食品

 日本は第5位の温暖化ガス排出の大国であり、世界第6位の食品ロス大国でもある。その中で注目したい分野に備蓄食品がある。
 10年前、3.11東北の大震災があった。以降、備蓄食品の備蓄量が次第に増えている。10年前は年間160億円の売上規模であったものが現在は230億円に達すると言われている。しかし、そのすべてに賞味期限があり、時期がくれば焼却、または廃棄されている。
 実はフードバンクは年間4000tから6000tのリデュースをこの10年間やってきている。日本全国の140くらいのフードバンクの年間取扱量と首都圏で防災備蓄食品として廃棄される量は、ほぼ同量と推定されている。
 私は東京都のモデル事業として、備蓄食品のリユース、リデュース、リサイクルの事業を行ってきた。そして国から内閣府、消費者庁、消防庁、環境省連名で各地方の自治体に対し、備蓄食品の有効利用の通達と共に私どもリボーンセンターでの東京都での取り組みやフードバンクの仕組みが伝えられた。

一般社団法人食品ロス・リボーンセンター 代表理事山田英夫 氏一般社団法人食品ロス・リボーンセンター 代表理事
山田英夫 氏

ルートの確保とメニュー開発が課題の備蓄食品の寄贈

 リボーンセンターでは、まず備蓄食品のリデュースと食品ロス発生抑制のために東京都内の2200の福祉施設、子ども食堂、炊き出し団体、フードバンク、都内の社会福祉協議会に寄贈を行った。しかし、何でも配ればいいというものではなく、相手のニーズに合わなければいけない。実際ほしいと言われる生鮮3品や冷蔵・冷凍食品などは実はなかなか要望に応えられていない。
 防災備蓄食品をきちんと消化するには、配るルートを確保する必要があり、新たなメニューを開発するという課題がある。そこでリボーンセンターでは、福祉イベントや備蓄が進んでいない福祉避難所に提供している。また学校給食ではメニュー開発を行い、そこで食品ロスの教育も実施している。
 食品リサイクルに関しては防災備蓄食品というパッケージが頑丈なため、この一つひとつを分別し、まとめてリサイクル工程に送るという作業を行っている。こうした作業で生まれた飼料は、エコフィードと呼ばれている。今年小学校でこのエコフィードの肉を給食に出していただいたが、好評だった。また子どもたちはエコフィード食品を通して、ロスのことをよく理解してくれた。

備蓄食品の活用で見えてくる食品ロス削減の道筋

 次に新たな取り組みとして、液体ミルクの取り扱いがある。備蓄食品の中でも液体ミルクは2年前に日本で開発されたが、全国の自治体の13.4%しか備蓄されていない。その理由は、災害が起きなかった場合に備蓄したミルクの行先がなく、廃棄もしづらいことから備蓄ができないという選択になっている。そこで私どもが新たに始めているのは、日本栄養士会さんと全国食品リサイクル連合会と組み、1つは日本栄養士会さんに液体ミルクを使うレシピを開発していただくことである。そしてこの液体ミルクのレシピでどれだけ液体ミルクを使っていただけるかというアンケートを行い、実際に使えない場合は、リサイクルをするとどれだけのコストがかかるかという試算を行いながら、実際の窓口の方には、ローリングストック法で無理なく、段階的に備蓄を進めていくという提言を検討している。
 美味しく食べられるものはリデュースで寄贈して地域貢献。食べられないものはリサイクルして飼料化、ひいては飼料の自給率のアップにつなげていく。食品ロス削減の道筋というのは、この災害大国日本において、備蓄食品を活用することで生まれるのではないか。単に掛け捨て保険としての備蓄ではなくて、利用価値のあるものだという意識をもっていただきたいと思っている。

END