第22回グリーン購入大賞「表彰式」を開催 グリーン購入ネットワーク

  2021年12月15日、グリーン購入ネットワーク(以下、GPN)は第22回となるグリーン購入大賞「表彰式」が開催された。
 当日は、大賞を受賞した5団体(株式会社キミカ、NGP日本自動車リサイクル事業協同組合、不二製油グループ本社株式会社、つくば市、住江織物株式会社)の代表よりスピーチがあり、授賞の喜びとともにさらなる飛躍を誓う力強い抱負が語られた。

審査総評
審査委員長 GPN会長(東京大学大学院教授) 梅田 靖 氏

 数十年に一度であったはずの豪雨と熱波は、毎年のように繰り返され、私たちの生活や経済に深刻な影響を与えています。一方で、プラスチック資源循環促進法の施行を前に、プラスチック製品のあり方や代替素材の活用に注目が集まり、Nature SBTやTNFD等、生物多様性の保全に向けた新たなイニシアティブが動き出す等、持続可能な社会の実現に向けた取り組みが広がってきています。
 22回目となる今年度のグリーン購入大賞は、SDGsの目標達成に寄与する消費と生産の取り組みに加え、昨年度設けた「プラスチック資源循環特別部門」を継続し、プラスチック問題の解決に寄与する取り組みを表彰しました。近年の中では、最も多くの企業・地方自治体・団体から応募があり、その中からとりわけ優秀と判断した10団体を表彰しました。
 各部門を通じて多かったのは、再生可能エネルギーで発電された電力を調達する取り組みでした。従来、大手製造業が中心であった再エネ電力の調達ですが、サービス業や小売業に加え、中小企業や大学、地方自治体等、多様な業種・団体から応募がありました。これから再エネ電力の調達に取り組もうとする企業や団体には、自分たちとの類似点・共通点を見出し、参考にしていただきたい取り組みです。
 大企業部門では、サプライチェーンを通じた原材料の持続可能な調達の取り組みや、その取り組みを支えるサービス等が多く見られました。上流に位置する一次サプライヤーへ方針等を伝えるだけでなく、二次・三次と遡ったり、認証制度を活用したりする応募や、環境面への配慮に留まらず、労働者への適正な対価の支払い等の社会面にも配慮した事例があり、取り組みの幅の広がりが感じられました。
 プラスチック資源循環特別部門の表彰は1団体でしたが、プラスチック資源をつなぎ、循環させるための事業者のパートナーシップやシステムを構築しようとする試みが随所に見られました。
 これから取り組みをされる企業や既に取り組んでいる団体の方々には共通点などを見出し、参考にしていただき、さらなる優秀事例を発展させることを期待しています。最近は、一人ではできないことを皆が力を持ちよって達成する動きが見られます。特に一団体だけではなく、様々な事業者や団体が手を組んで取り組む活動がよく見られます。
 GPNはそのような仲間を増やしながら、課題解決につなげるネットワークです。本日受賞される皆様は先駆者として私たちGPNと一緒に、成果に至るプロセスや関係者との連携の形等、成果に至るエッセンスを拡散する役割を担っていただくことをお願いし、審査委員長の講評とさせていただきます。

GPN会長 梅田 靖 氏

大賞・環境大臣賞
株式会社キミカ(中小企業部門)
【受賞タイトル】 海のゴミを資源に。 漂着海藻から「アルギン酸」を生み出し、サーキュラーエコノミーを80年間実践した企業
株式会社キミカ 代表取締役社長 笠原文善 氏

 私たちは世界中に繁茂し、ライフサイクルを終え海岸に漂着した海藻を資源として有効活用することに一貫して取り組んでまいりました。海藻は生きている間は光合成によりCO2を吸収し、どんどん成長いたします。形成される海中林は魚に産卵場所を提供し、孵化した稚魚を守り、育むゆりかごの役割を果たしています。ところがライフサイクルを終え、一旦岩から離れた海藻は海に漂うごみとなり、やがて腐ってCO2の発生源となります。私たちはこの漂着した海のごみである海藻を確実に有効活用し、食品・医薬・化粧品などの産業に欠くことのできない機能性素材アルギン酸を精製し、世界中に供給し続けてまいりました。南米チリの海岸に漂着する海藻を確実に集め、世界一乾燥したアタカマ砂漠を天然の乾燥システムとして利用し、サプライチェーンの源である漁民の生活を安定化し豊かにする。その一方、生きた海藻の刈り取りは絶対にさせない。乱獲は絶対に許さない。これを徹底してまいりました。またアルギン酸の製造プロセスにおいて環境負荷の小さな独自の製法にこだわり、磨きをかけ、海藻残渣も余すことなく肥料として活用しまいりました。この当社の追求してきた資源循環型ビジネスモデルの根底にあるのは、創業以来堅持してきた「もったいない」の精神であります。今後ともこの「もったいない」精神に則り、環境価値、社会価値、経済価値のすべてを両立させた事業活動を展開し、環境大臣賞受賞企業の名に恥じない社会貢献を果たしてまいりたいと思っております。

株式会社キミカ 代表取締役社長 笠原文善 氏

大賞・経済産業大臣賞
NGP日本自動車リサイクル事業協同組合(行政・民間団体部門)
【受賞タイトル】 自動車リサイクル部品でカーボンニュートラルに貢献 ~削減効果の定量化と研究成果を活用した 普及・啓発~
NGP日本自動車リサイクル事業協同組合 理事長 小林信夫 氏

 自動車リサイクル部品が資源の節約と環境にやさしいことはわかっていました。しかしながら、具体的な根拠を示すことができないままでした。そこでリサイクル部品が環境にやさしいことを定量的に示せばリサイクル部品の付加価値と利用するユーザーの環境貢献意識を向上させることができるのはないか、強いては地球環境保護に貢献できるのではないかとの考えから産学共同でこの研究をスタートさせました。2016年に研究成果を公表してからはリサイクル部品CO2削減の効果を示してのカーユーザーへの啓蒙活動や工場見学を利用した学校教育での取り組みなど様々な形で世の中に広める活動を行ってまいりました。
 今回の受賞は自動車修理にリサイクル製品を活用する選択肢もあるということを世に広め、持続可能な社会の貢献ができるものと考えています。私たち一同はこの度の栄誉を励みとし、これからも尚一層の研さんを重ね、引き続き精進していく所存です。

NGP日本自動車リサイクル事業協同組合 理事長 小林信夫 氏

大賞・農林水産大臣賞
不二製油グループ本社株式会社(大企業部門)
【受賞タイトル】 持続可能な食料システムに貢献する地球環境および 人権に配慮したパーム油のサステナブル調達
不二製油グループ本社株式会社 代表取締役社長 酒井幹夫 氏

 私たちはこれまで植物の力で時代に則した豊かな食生活に貢献してまいりましたが、一方で弊社が使うパーム油やカカオ、大豆といった原料の生産地におきまして、森林破壊や強制労働、児童労働といった人権に関わる問題が指摘されており、不二製油はこうした深刻な問題に真正面から向き合い、サスティナブルな原料調達に真摯に取り組んでまいりました。
 私自身が原料調達の重要性を認識したきっかけの一つはNGOからの一通の手紙でアメリカのグループ会社社長を勤めていたときの出来事であります。手紙にはパーム油の環境や人権に関する批判が書かれており、当時はまだ世の中で今ほど大きな問題として取り上げられることはありませんでしたが、この手紙を機に「今後、これは重大なリスクになる」と感じ、日本へ帰国後の2016年にサプライチェーンマネジメントチームを作り、パーム油のサスティナブル調達に本格的に着手いたしました。これまで現地に根付いたNGOやサプライヤーとの協力のもと、トレーサビリティを追求し、森林保全や労働環境の改善に取り組んでまいりましたが、この度の受賞のように社会からご評価いただけるレベルになり、着実に成長したことが大変嬉しく、従業員だけではなく、日頃ともに活動しているステークホルダー、そして地域の関係者にとっても大きな励みになると思います。
 今、私たちは気候危機を回避し、サスティナブルな社会を実現するために将来世代に安全で豊かな生活を受け渡すことができるのか、とても重大な岐路に立たされております。特にコロナ禍におきまして私たちの食料システムの脆弱性、社会そして人と自然のシステムの相互依存について思い知らされましたが。この歴史的転換点において脆弱な立場にストレスを押し付けるのではなく、イノベーティブなパートナーシップで地球と人のサステナビリティに取り組んでいかなければなりません。
 不二製油グループは今回の栄誉を励みとして、これからもなお一層食品サプライチェーンの上流と下流をつなぐ要として現地に根付いた改善活動を展開するとともに産・官・学・民の連携で持続可能な食のライフスタイルの気運を高めていきます。
 命を守る、食のエッセンシャル企業としまして、お客様や消費者の皆様へその取り組みを広く伝えていくことで持続可能な食料システムの実現に貢献いたします。

不二製油グループ本社株式会社 代表取締役社長 酒井幹夫 氏

大賞
つくば市(行政・民間団体部門)
【受賞タイトル】 公共施設における「価格と環境」への影響を考慮した持続可能な電力調達
つくば市長 五十嵐立青 氏

 環境配慮契約について賞をいただきました。初期投資や新しい設備投資をするということは自治体にとっても企業にとっても難しいわけですが、環境配慮契約のカタチでしたら、イニシャルコストもかなり減らすことができるという取り組みを進めてまいりました。その過程で電気事業者に様々なアンケートをすることによってどういうカタチの契約であれば皆さんが入りやすいか、ということも含めて進めてきたことによってCO2を減らしながら、コストも7千万ほど削減し、そして多くの事業者に環境配慮契約についても関心を持ってもらえ、啓発をすることができたことが非常に大きいと思っています。
 今回の提案をしていただいたのは、若手の職員ですが、そういう若手の職員の提案を上司が動かしていく。我々は余計なことを言わずに次の世代で責任をもっている人たちが仕事をしやすいようにしていくことが大きな仕事なのだろうと考えています。つくば市は「世界のあしたが見えるまち」というヴィジョンを掲げています。世界中で環境、気候、食料、そして少子高齢化と様々な問題がありますが、まだその答えを出している自治体はありません。そういった問題解決のヒントになるような取り組みをつくば市で進めていきたいと思っております。

つくば市長 五十嵐立青 氏

大賞
住江織物株式会社(プラスチック資源循環特別部門)
【受賞タイトル】 水平循環型タイルカーペットECOSシリーズ
住江織物株式会社 代表取締役社長 永田鉄平 氏

 我々住江織物は1883年の創業で日本では最初に絨毯や鉄道のシート地を作った会社でございます。現在では売上の約60%が自動車や鉄道の内装関係、残りの約40%がインテリアになっております。会社のDNAには常に新しいものをつくり出すというフロンティア精神が刻まれております。今回、表彰をいただいた水平循環型リサイクルタイルカーペット「エコス」は実は10年前から生産・販売をしております。誰もが産業廃棄物に対してあまり関心を持っていなかったときから、回収業者と共同で水平循環に取り組み、今日に至っております。開発には3年を要し、大幅な変更をいたしました。
繊維分を一部含むポリ塩化ビニルを再び原材料として安定生産するということはかなりハードルが高いことでございましたがなんとか思考錯誤の後に生産・発売にこぎつけたということになります。当時はまだまだ建築業界には環境ということに関する認識が高いとは言えない状況でございました。我々の「エコス」は価格が従来品といっしょということで
通常通り販売いたしましたが飛躍的に伸びるということにはなっておりませんでした。ところが昨年あたりからSDGs、ESGというカテゴリーのもとに皆さんの関心も上がり、設計関係の方々や特にディベロッパーと呼ばれる方々から強く関心を示していただき、近年では大型のプロジェクト等も受注させていただき、今後飛躍的に伸びていくだろうと確信しております。
我々はタイルカーペットの染色設備を本年廃棄させていただきました。これは染色に利用する電力や水などをなくして、最初から色のついたファイバーを使うことで大きなエネルギーの削減や汚水を抑えることを実現したわけでございます。従来品に比べて二酸化炭素の排出量はタイルカーペット1㎡あたり、1kg削減することができます。エコスはもともとバッキングの部分で従来品と比べて4kgの二酸化炭素の削減をしておりますので合わせますと1㎡あたり、5kg削減することができます。そのため大規模なオフィス、たとえば1万㎡のオフィスでありますと約50tの二酸化炭素を従来品と比べて削減したことになります。今後もさらなる環境への貢献を目指して現在は北海道の廃漁網からナイロンのファイバーを作ることもトライしております。これからも環境の住江織物の名前に恥じないよう、さらなる環境商材の開発を進めてまいります。

住江織物株式会社 代表取締役社長 永田鉄平 氏