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第五回UNEPフォーラムがオンラインで開催

UNEP(国連環境計画)と一般社団法人日本UNEP協会の主催による「UNEPフォーラム2021」が、3月23日にオンラインで開催された。第5回となる今回は「Making Peace with Nature(自然との仲直り)」をテーマに、UNEPが発表した新しい「排出ギャップ報告書2020」や2月に行われたUNEA-5(第5回国連環境総会)の様子、そして食品ロス削減にもつながる有事への備えなどを取り上げた。

警鐘を受け止めながら、持続可能な地球へ

 冒頭、挨拶に立った日本UNEP協会代表理事の鈴木基之氏は大要を、次のように述べた。

 昨年はCOVID-19に翻弄された年であり、現在も感染者数の増減で一喜一憂しているが、このパンデミックでは人類が一度立ち止まり、今までの生き様やあり方、活動を振り返り、今後どのように進むべきかを根本的に見直す時間を与えられたとも考えられる。
 環境面では世界的にも大規模森林火災や従来にない降水量の局部的な増大による洪水の被害、さらには砂漠トビバッタの大発生など、枚挙にいとまがない災害が起こっている。またパンデミックの元となった新型コロナウイルスも、人間と動物との接点が変わり、その変貌の結果としてもたらされたという指摘もある。
 ちなみに1970年頃から地球の人口は現在まで2倍以上になっている。そして経済活動の指標であるGWPは概ね4.4倍にまで高まっている。すなわち同じ地球の上で50年の間に人間活動の影響が急激に大きくなったということであり、これによって、ある意味地球のシステムが悲鳴をあげはじめ、そして警鐘を鳴らしている。
 UNEPは、環境問題が認識され始めた1972年に国連の中で設置され、ナイロビにその事務局がおかれている。現在の事務局長は2年ほど前に任官されたインガー・アンダーセン氏だが、非常に大きな環境的課題を抱えるこの地球の全体像をどのように回復基調に戻していくか、そして将来の世代が生きていく持続可能な地球の姿とは何か、といった課題解決に向けて先頭に立って推進されている。
 日本UNEP協会は、UNEPの活動を我が国の側から支援すると同時に国際的な視野から私たちが何をすべきか、ということに関する啓発活動を日本国内で行ってきた。今後も皆様と共に将来の世代が本当に持続可能で安心して暮らせる地球を維持するために、どのように営みを変更すべきなのか、どういう価値観を持つべきなのか、といったことを共に考えることができればと思っている。

 続いて挨拶を述べた環境省地球環境審議官の近藤智洋氏は、海洋ごみ及びマイクロプラスチック問題においてこれまでUNEA決議に基づく専門家会合が4回開催され、日本はその第4回会合で議長を務めたことを紹介。実質的な議論が行われる来年2月の UNEA-5パート2では、引き続き海洋プラスチックごみ問題の解決に向けて力を注ぎたいと話した。また、SATOYAMAイニシアティブを通じて、新たな国際枠組みのもとでも生物多様性の保全と持続可能な利用に貢献し続けるとした。
 外務省からは地球規模課題審議官の小野啓一氏が挨拶。明年で設立50周年を迎えるUNEPの活動を高く評価し、気候変動、生物多様性の損失、汚染という相互に密接に関連する3つの環境危機に対して国境を越えた協力がこれまで以上に必要となることから、多国間の協力を主導してきたUNEPの今後の取り組みに期待を寄せた。

日本UNEP協会 代表理事 鈴木基之氏日本UNEP協会 代表理事 鈴木基之氏

より回復力があり責任のある世界を「より良く構築」するために
インガー・アンダーセンからのビデオメッセージ

 次にUNEPのインガー・アンダーセン事務局長からのメッセージを、UNEP-ROAP (アジア太平洋地域事務所)デチェン・ツェリング 所長 が代読したビデオが放映された。ここではその全文を掲載する。

ご列席の皆様
 「UNEP フォーラム 2021」につきまして、国連環境計画(UNEP)の事務局長である インガ―・アンダーセンからのお祝いの言葉をお伝えさせていただくことを光栄に思います。ここに国連環境計画からのメッセージをお伝えいたします。

 本日は、鈴木基之代表理事、吉村皓一事務局長にお誘いいただき、このイベントが開催できることに感謝いたします。
 私たち UNEP にとって、地球と人類が直面している3つの地球規模の危機、すなわち気候変動、自然の劣化、廃棄物および汚染の課題に対処するには、日本UNEP 協会やその会員の方々などのパートナーシップが重要です。
 パンデミック後のグリーンリカバリーは、経済をリセットし、消費と生産のパターンを改め、グリーンジョブ、再生可能エネルギー、持続可能な食品システム、グリーンインフラストラクチャーなどに投資する機会を提供します。
 経済団体を含む民間部門は、これらの分野を主導するにあたり、重要な役割を果たしています。このような努力は、持続可能な開発を支援しながら、3つの危機すべてを解決するのに役立ちます。
 経済を刺激するためにとられる政策と投資の判断は、人間性、雇用、平等、そして私たちの経済を支える生態学的基盤に対する将来のリスクを軽減するか、増幅するかという面で決定的になります。包括的でグリーンな経済回復には、誰も取り残さない行動が必要です。
 特に化石燃料からの投資の撤退、再生可能エネルギーへの移行、2050 年までのネット・ゼロ排出量の達成など、気候変動とその影響に対処する日本の取り組みには勇気づけられものがあります。
 私たちは、日本 UNEP 協会の民間部門のメンバーが、政府と協力して脱炭素社会への移行を主導していただけると嬉しく思います。
 私たちの行動は、持続可能な開発目標(SDGs)、パリ協定、2020 年以降の生物多様性フレームワーク、同じく化学物質フレームワークに沿ったものとしましょう。これらは私たちが望む未来へとつながる道しるべです。
 より回復力があり責任のある世界を「より良く構築」するために、お互いに助け合いましょう。このフォーラムでご挨拶する機会をいただいたことに、あらためて感謝いたします。
「ありがとうございます」

UNEP-ROAP (アジア太平洋地域事務所)所長 Dechen TseringUNEP-ROAP (アジア太平洋地域事務所)Dechen Tsering 所長

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