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持続可能な地域づくりへ「リモートセンシング技術」を活かす連携協定を締結
~ 一般財団法人リモート・センシング技術センターと公益財団法人イオン環境財団が連携協定を締結 ~

  • 記者会見より
    記者会見より
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    記者会見より

新しいコンセプトでイオンの森づくりを推進

 その中で今後のイオンの森づくりについて言及。1991年より開始しているイオンの植樹活動は、これまでに植樹してきた木が約1,193万本※になり、その地域が国内外で50地域となったことにふれながら、2020年度はイオン環境財団設立から30周年目の佳節となる。今後も新しいコンセプトの森づくりに向けた植樹活動を行っていくと話した。そのコンセプトとは「イオンの従業員、地域の皆さまを含めてステークホルダーとともに新たな持続可能な森をつくる活動」。これをベースに、リモートセンシング技術を用いてイオンの森づくりをその地域の人々を巻き込んだ地域再生活動へと発展させていきたいと説明した。また、緑の量から質に重きを置き、一つの地域に対して長期で取り組んでいく方向にあると述べた。
※「(公財)イオン環境財団による植樹」、「イオンふるさとの森づくり」、
 「イオン東北復興ふるさとの森づくり」の合算本数

※(公財)2019年2月末現在

ひとつしかない地球を守るための手法に

 次に、連携協定後に行われる「植樹候補地の選定」と、「森のコンディションの診断」について説明。植樹候補地の選定においては、①自然災害が多く発生している地域②森林の機能が低下している地域③地盤が経年変化している地域の3つに絞り、その調査に本技術を活用していく。森のコンディションの診断においては、イオン環境財団が以前行った植樹地で、①面積が広く、調査が難しい地域②人が入ることが困難な地域③社会的意義が大きいと思われる地域を中心に、森のコンディションの診断に用いていきたいと話した。
 また、以前に植樹を行った万里の長城や広域にわたる北海道の知床地域において、本年から明年にかけて調査していく予定にあると語った。そして最後に、「双方が研究実践を通じて、共に学び、共に成長し、新たな森づくりへのベストプラクティスを通し、日本のみならず、世界各地へこの技術を拡大・展開していくことで、一つしかない地球を守るための手法の一つにしていきたいと考えている」と結んだ。

気候変動の緩和レベルも定量評価

 続いてリモート・センシング技術センターの山本彩氏より連携協定の具体的な内容について説明が行われた。まず、イオンの森づくりにおいては、人工衛星からの観測やドローンおよび、地上計測等を用いて、科学的かつ客観的に得られたデータをもとに植樹が行える候補地を効果的に選定。植樹後には森林の健康診断を実施し、森林の生育状況や森林資源量の客観的な把握が可能になると話した。
 さらに、この技術によって標高などに関する正確なデータのない地域についても、それが人工衛星などで測定可能になることを紹介。そういった宇宙からの観測で得た地形情報や地殻変位情報、地図情報および日射量などの気象情報等が最適な植樹候補地選定に役立つと述べた。また森のコンディションの診断においても植樹2~3年後からの枯死木、生育状態、樹高を捉えた衛星画像から植林の状況を把握。地上の計測でしか得られない樹木の胸高直径等と組み合わせて、森林資源量の算出もできると話した。そのことによって植樹地での炭素吸収量の算定が可能になり、気候変動緩和策への貢献度合いについて、定量評価ができると述べた。

次世代の環境教育に貢献できる技術

 次に、リモートセンシング技術が環境教育にどのように役立つことができるかを解説した。
 その一例として、宇宙から観測したデータが国境に関係なく、広い範囲を均一にカバーでき、継続的な観測によって経年変化も可視化が可能になることを強調。森林減少や地球温暖化、大気汚染など様々な環境問題を視覚的に把握できると話した。
 この環境教育は、国内における小中学生向けや海外において実施。小中学生に対しては地球温暖化、熱帯雨林の減少、オゾン層の破壊、水資源の枯渇といった“地球規模の環境問題”の理解や、環境保全の重要性を伝えるために本技術を用いた教材を作成し、各地のイオンの店舗や学校へ出向き、授業を行っていく予定であると述べた。
 海外での環境教育では、アジア学生交流環境フォーラム(ASEP)等へ講師を派遣。今後もより多くの海外学生に、地球規模から身近なものまで様々な環境問題を理解してもらい、環境保全の重要性と自国での活動につなげてもらいたいと抱負を語り、説明を終えた。
 記者会見の最後には質疑応答が行われ、今後の国際機関への発信などに対して質問が活発に寄せられた。
 今回の連携協定の期間は2023年までの5年。その間に、日々深刻化が進む気候変動に対してこのコラボレーションがどのような役割を果たすか、期待が高まる。

植樹前の衛星観測画像

植樹前の衛星観測画像

植樹後の衛星観測画像

植樹後の衛星観測画像

より詳しい内容が、動画でご覧いただけます。

全編映像

ナレーション付きダイジェスト映像

連携について説明/イオン環境財団 山本百合子 氏(動画)

連携について説明/リモートセンシング技術センター 山本彩 氏(動画)