CDPAリストアワード PART2

環境情報開示を推進する国際NGOのCDPは2022年1月19日にCDPAリスト企業アワードをオンラインで開催した。PART1で紹介できなかった優秀企業スピーチを紹介する。

優秀企業スピーチ

ダブルAリスト(気候変動・水セキュリティ)

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アサヒグループホールディングス株式会社
代表取締役社長 兼 CEO 勝木 敦志 氏

私たちアサヒホールディングスは水や農産物などの自然の恵みを享受して事業を行っております。お酒やソフトドリンク、食品などの商品において最高の品質と期待を超える美味しさを創造し続けるために自然の恵みを次世代に引き継ぐ責任があると考えています。気候変動への対策としましては2050年までにバリューチェーン全体のCO2排出量ゼロを目指します。このアサヒカーボンゼロの達成に向けて2030年までにSCOPE1、2におきましてCO2排出量50%削減、海外を含めた当社グループの生産拠点において2025年までに全70工場のうち、9割以上で再生可能エネルギー化を進めています。水セキュリティについては世界中の各工場での水使用量のさらなる削減を進める取り組みや持続可能な森林管理を続けてきた社有林「アサヒの森」を中心にした水の涵養に取り組んでおります。当社はCO2排出量や水使用量の削減だけではなく、農産物原料・容器包装などの環境負荷低減は当然のこととして当社独自の微生物、発酵技術を活かした環境へプラスとなるような取り組みをさらに拡大してまいりますのでぜひご期待ください。

小野薬品工業株式会社
代表取締役社長 相良 暁 氏

当社は1700年の創業以来、薬業一筋に歩んできました。「病気と苦痛に対する人間の戦いのために」という企業理念のもと、独創的かつ革新的な薬品を患者さんに1日でも早くお届けできるよう日々の事業活動に取り組んでいます。当社は当社の事業活動が健全な地球環境に支えられて成り立っていることを認識し、環境課題への取り組みを強化することが重要であると考え、2019年6月に中長期環境ビジョン「エコビジョン2050」を策定し、脱炭素社会の実現のために2050年に当社の温室効果ガス排出量をゼロにするという目標をいち早く掲げ、全部門を通じて省エネルギーの推進、再生可能エネルギーの導入などの取り組みを進めています。また水循環社会の実現のため、水利用の効率化を進めるとともに排水の管理を徹底して行っています。エコビジョン2050を実現するためには一つひとつの取り組みを着実に進めていく必要があります。企業として事業の拡大を進めていく中で持続可能な地球環境の実現に貢献できるよう挑戦を続けていきたいと思います。

キリンホールディングス株式会社
代表取締役社長 磯崎 功典 氏

当社は食品や医薬品を提供する企業の使命として、環境問題に取り組んできました。COP26ではTNFDも議論されましたが、SBTネットワークが主催するコーポレート・エンゲージメント・プログラムにも、今年、日本の食品業界で初めて加盟し、自然資本利用に関するグローバルなルール作りにも参画しています。キリングループでは、環境課題や社会課題の解決により社会的倫理と経済的価値の両立を目指すCSV経営を掲げております。地球温暖化は世界共通の問題である「感染症」と言ったリスクも引き起こし、人類への脅威となりかねません。このような社会課題を解決するため、発酵・バイオ技術から誕生した免疫機能の維持をサポートするプラズマ乳酸菌などを提供することで、新たな成長機会にもつなげていきたいと思います。これからも人類と自然が共生する日本の「環境立国」に貢献し、世界のCSV先進企業を目指していくことを最後にお約束し、お礼に代えさせていただきます。

住友化学株式会社
代表取締役社長 岩田 圭一 氏

住友化学グループは気候変動問題を化学企業が率先して取り組むべき社会課題として捉え、10年以上前より専門部署を設けて対応を進めてまいりました。そしてこの取り組みをさらに進めるべく昨年12月、カーボンニュートラル実現に向けてのグランドデザインを策定し、公表をいたしました。「当社グループのGHG排出量を2030年までに13年比で50%削減する」という新たな目標を掲げ、また2050年までにカーボンニュートラルの実現を目指します。住友化学グループならではの取り組みとして科学的、論理的、定量的に裏付けされた計画に基づき、自らの生産活動におけるGHG排出量をゼロに近づけることを、これを責務とし、そして我々が提供する製品・技術を通じて世界のGHG排出量を削減すること、これを貢献とし、責務・貢献の両面に注力してまいります。また気候変動問題の背後にはさらに複雑な生物多様性の課題があります。GHG削減と並行して水・土壌などを含めた幅広い環境保全にも取り組んでまいります。これらの取り組みは、けっして容易なものではありません。しかし私たち住友化学グループは総合化学メーカーとして培ってきた技術力と知見を活かし、加えて様々なステークホルダーと連携することでこれら課題に挑戦してまいります。

セイコーエプソン株式会社
代表取締役社長 CEO 小川 恭範 氏

私は昨年のこのスピーチで多くのパートナーの皆さんとともに持続可能な社会の実現に向け、邁進することを誓いました。その後、エプソンは2021年3月に長期指針である「環境ビジョン2050」を改訂し、2050年にカーボンマイナスと地下資源消費ゼロを達成し、持続可能で心豊かな社会を実現すると宣言し、企業活動を進めることにしました。このビジョンの実現に向け、様々なパートナーの皆様との共創のもと、環境負荷の大幅削減に役立つ技術開発を加速し、より良い商品を市場に提供すべく事業を展開しています。また具体的な成果として2021年11月にはエプソンのすべての国内拠点で使用する電力を100%再生可能エネルギーに転換いたしました。今後2023年には世界の拠点すべてを再生可能エネルギーによる電力とする予定です。2025年に向けたCDPの5カ年戦略ではサステナブルな経済を築くためにESGにおけるEである環境の定義をプランタリーバウンダリーに拡大するとしており、これからはこれまで以上に広範な取り組みが必要であると思います。私どもエプソンは将来への深い洞察に基づく意思決定と行動により、持続可能で心豊かな社会を実現する歩みを着実に進めてまいります。

積水化学工業株式会社
代表取締役社長 加藤 敬太 氏

不確実な社会で持続的に成長し続ける企業であるためにはESGを経営の中心に置き、社会要請にきちんと向き合い、社会課題解決に貢献できる製品群の開発をイノベーションで牽引していく、そうした思いで積水化学グループではInnovation for the Earth 」をビジョンステートメントとして掲げた、2030年度までの長期ビジョン「Vision 2030」を策定 しました。その中で重要な社会課題の一つが脱炭素と資源循環の両立であると認識しています。気候変動課題については事業活動におけるGHG排出量2050年実質ゼロを目指し、まず2030年に購入電力を100%再生可能エネルギーとすることをマイルストーンに設定しています。当社ならではの取り組みとしてソーラーパネル搭載の住宅「積水ハイム」の販売で再生可能エネルギーの普及・促進に貢献し、お客様の余剰電力を買い取らせていただきグループ内の工場で活用しています。現在では国内外の重要拠点で電力を100%再生可能エネルギーに転換し、13拠点で自家消費型太陽光発電設備を導入しました。再エネ比率の目標も前倒しで達成しています。また昨年5月には資源循環方針を策定しました。サプライチェーンの皆様との連携で化石由来のバージン原料の使用量を最小化し、廃棄物の再資源化を推進することで事業を通じたサーキュラーエコノミーの実現でお客様のSCOPE3の削減を目指します。

ソニーグループ株式会社
会長 兼 社長 CEO 吉田 憲一郎 氏

我々が企業活動を営むには、人・社会・地球が健全であることが前提だと考えています。ソニーは2010年に長期環境計画を策定し、それ以降、カーボンニュートラルを含む環境負荷ゼロに取り組んできています。気候変動に関しては2050年までの温室効果ガスの排出ゼロ実現に向け、環境に配慮した製品やサービスを開発・提供するとともに事業所の省エネルギー化や再生可能エネルギーの導入を推進しています。2018年にはRE100に加盟しました。水資源管理では特に大量の水を必要とする半導体製造において取り組みを進めており、長崎の事業所等で排水の再利用を含む水使用量の抑制を推進しています。今後も「クリエイティビティとテクノロジーの力で世界を感動で満たす」というパーパスのもと、企業としての責任を果たすとともに事業や技術を通じて、持続可能な社会・環境の実現に貢献してまいります。

中外製薬株式会社
代表取締役副会長 上野 幹夫 氏

当社は世界の医療と人々の健康への貢献をミッションとしておりますが、その実現に向けたすべての企業活動がサステナビリティの取り組みそのものだと考えています。その中で環境保全活動は当社の企業活動を支える重要な基盤と捉えており、中長期目標を設定し、全社的な取り組みとして地域社会や地球全体の環境保全を推進しています。具体的には省エネ効率の良い設備の導入、フロン類の使用量削減、再生可能エネルギーの導入など20年以上にわたり、気候変動対策を実行してまいりました。また水は製薬にとって欠かすことのできない重要な資源であることから、単に使用量を削減するだけではなく生産拠点のある河川の水源保全活動にも取り組んでいます。2021年はCOP26において世界の平均気温の上昇を1.5℃に抑えるという国際的な数値目標が導入されました。2050年のカーボンニュートラルの実現に向け、各企業がより積極的に取り組むことが期待されています。当社は成長戦略「TOP I 2030」を策定しています。環境を重点分野の一つと定め、気候変動対策、循環型資源の利用、生物多様性保全への取り組みを戦略的に実行していきます。今後も当社と社会の双方の発展を目指し、2030年には社会課題解決をリードする世界のロールモデルとなる会社を目指してまいります。

トヨタ自動車株式会社
Chief Sustainability Officer (CSO)  大塚 友美 氏

トヨタは長年、電動車の開発・販売に取り組むとともに2015年のパリ協定合意に先立ち、トヨタ環境チャレンジ2050を策定し、水環境も含め、継続的に環境問題に取り組んでまいりました。2050年、カーボンニュートラル社会の実現に向けて生産工程では日常改善と革新技術の導入、再生可能エネルギーの導入や水素の活用を推進し、2035年のカーボンニュートラル達成を目指しております。製品については世界中のお客様にできるだけ多くの選択肢をご提供し、お客様に選んでいただくことでCO2の削減を進めてまいりたいと考えております。トヨタは人と社会のしあわせを量産する会社になりたいと考えております。それは誰一人取り残さないという姿勢で国際社会が目指すSDGsに本気で取り組み、その先の人々のしあわせを目指していくことです。次の世代に美しい地球とたくさんの笑顔を残していくために世界中の仲間とともに心を一つにして意思と情熱をもって行動してまいります。

ナブテスコ株式会社
代表取締役社長 寺本 克弘 氏

ナブテスコは独創的なモーションコントロール技術で生産現場の自動化や陸海空の安全・安心で快適な移動を支える機械コンポーネントメーカーです。気候変動問題は人類が直面している最重要課題の一つですが当社でも気候変動対応を経営マテリアリティの最重要項目として位置づけており、昨年CO2排出削減の長期目標を1.5℃レベルに引き上げ、SBT1.5℃の認定を9月に取得いたしました。この長期目標の達成にはガバナンスも大変重要です。当社では今後の設備投資についてはその一定額を環境投資に振り向けることとし、
取締役界においてもCO2削減の進捗をモニタリングしています。従業員や役員のインセンティブとして環境貢献達成度を組み込むなどのルールを整備し、気候変動対応を積極的に推進しています。また気候変動対応は私ども一社だけでは十分な成果につながりません。主要サプライヤー様ともいっしょになってCO2削減を進めることでサプライチェーン全体での排出削減を目指していきます。当社の2030年長期ビジョンのテーマに掲げる「イノベーションを絶え間なく追求すること」を通して今後も環境・社会への貢献を図り、社会への価値提供ができるように環境マネジメントに取り組んでまいります。

日産自動車株式会社
社長兼最高経営責任者 内田 誠 氏

日産は「人々の生活を豊かに、イノベーションをドライブし続ける」というコーポレートパーパスのもと中期環境行動計画「日産グリーンプログラム2022」を推進しています。そして気候変動・水資源・大気比率・資源依存、この4つを重点課題として位置づけ、環境課題の解決に向けた取り組みを着実に進めています。昨年1月には気候変動への新たな取り組みとして2050年までに車のライフサイクル全体におけるカーボンニュートラルを目指すことを発表し、4月にはCO2削減目標について日系自動車メーカーとして初めてSBTよる認証を取得しました。今後も車の電動化や次世代の車づくりを支える日産インテリジェントファクトリー、電気自動車の生産ハブとなるEV36Zeroなどを通じ車の利用及び事業活動の双方からCO2排出量の削減を推進していきます。一方、水資源の取り組みとしては工場における水の循環利用を促進することで取水量を削減し、ドライブブースド?と呼ばれる塗装工程を採用することなどによって水の使用量の削減も進めています。日産は引き続きステークホルダーの声に耳を傾け、信頼関係を強化しながらサステナビリティを事業の中核に据え、地球環境や社会課題への取り組みを推進してまいります。

日本電気株式会社
代表取締役 執行役員社長 兼 CEO 森田 隆之 氏

私たちは「NEC2030VISION]の柱の一つとして「地球と共生して未来を守る」を掲げ、「脱炭素社会の実現」「地球温暖化対策の実施」「水・食への安全への貢献」を進めています。昨今、世界中で、気候変動による気象災害が激甚化しています。昨年開催されたCOP26でも、脱炭素と合わせ、気候変動への適応、アダプテーション分野への重要性があらためて認識されました。この分野においてNECは防災・減災のITソリューションで世界に貢献しています。海外ではフィリピン・インドネシア・タイでセンサーや通信技術を活用した広域防災システムを提供し、地域の安全・安心に貢献してまいりました。日本国内では高松市でIOT技術や都市OSを活用して河川水位を監視し、迅速な災害対応の実現に貢献しています。NECは、スーパーコンピュータによる気象予測や、SARアンテナを搭載した人工衛星による被害把握も進めており、技術の力をアダプテーション分野に活用しています。NECは安全・安心・公平・効率という社会価値を創造し、誰もが人間性を十分に発揮できる持続可能な社会の実現を目指します。

日本たばこ産業株式会社
代表取締役社長 寺畠 正道 氏

JTグループではサステナビリティ戦略に環境負荷の軽減を最重要課題の一つとして設定しており、より具体的な目標としてJTBグループ2030を策定しております。各事業の積極的な取り組みにより、目標を上回るスピードで順調に進捗している結果が今回の受賞にもつながったものと考えております。環境計画の中でも温室効果ガスの削減は重要な課題の一つであり、JTグループでは2050年までに事業で使用する電力を100%再生可能エネルギー由来にするという目標を掲げています。それに対する事例の一つとして弊社のフィリピン工場においては1万7千40枚の太陽光パネルを導入しており、これは東南アジア最大の規模を誇っております。またヨルダンの工場は太陽熱により、発生させた蒸気を熱エネルギーとして利用する世界初のタバコ工場です。この取り組みはヨルダンの環境省と世界銀行に評価され、環境スチュアードシップ賞をいただきました。JTグループではこのような取り組みや世の中の動向を踏まえ、JTグループ環境計画2030をより野心的なものに更新する予定です。今後もステークホルダーの皆様から信頼される企業であり続けるためにJTグループが生み出す価値をより一層高めてまいります。

株式会社日立製作所
代表執行役 執行役社長兼COO 小島 啓二氏

11月のCOP26では日立は日本企業として初めてプリンシパル・パートナーとして参加いたしました。このCOP26で世界が地球の気温上昇を1.5℃に抑える目標を目指していくことが明確になりました。日立でもこの目標達成のために2030年度までに日立グループのファクトリー・オフィスのカーボンニュートラルを実現し、2050年度までにバリューチェーンを通じてカーボンニュートラルを達成することを目指しています。具体的な取り組みとして2019年度より、インターナルカーボンプライシング制度を運用し、今年度からは環境価値を勘案した評価を役員報酬制度に導入しています。また事業においては再生可能エネルギーの拡大に対応するパワーグリッド事業やカーボンフリーモビリティに貢献する鉄道事業やEVシステム事業を強化し、デジタルを活用したソリューション・サービスを通じて、社会の脱炭素化に貢献していきます。さらにグリッド制御技術や電動化と運用化技術、CO2の吸収・利活用の検討など脱炭素社会の実現に貢献できるテクノロジー開発も進めていきます。今後も日立は環境に配慮した持続可能な社会の実現を目指してまいります

富士通株式会社
執行役員常務 CSO(チーフ・サステナビリティー・オフィサー)兼
サステナビリティ推進本部長 梶原 ゆみ子 氏

グローバル社会では感染症の拡大、気候変動や水問題など様々な社会課題により、ビジネス・生活様式や価値観に大きな変化が起きています。企業にはすべてのステークホルダーに共感しつつ、長期的な視点で社会の持続可能性と事業を両立させていくことが求められています。富士通はグループ社員が一体となり、イノベーションによって社会に信頼をもたらし、世界をより持続可能にしていくというパーパスを追求し、社会課題解決を目指すことで持続可能な社会実現に貢献いたします。弊社は2050年の自ら、そしてお客様、社会のカーボンニュートラルの実現を目指し、「FUJITSU Climate and Energy Vision」を掲げています。昨年はビジョンを更新し、SBTを1.5℃水準に引き上げました。弊社は先進デジタル技術を活用し、お客様・社会の気候変動の緩和と適用に取り組んでいます。たとえば緩和策として量子現象に着想を得たデジタルアニーラを活用し、物流ネットワークの最適化により、コストとCO2削減を実現しています。他にも適応策として河川の水位をAI技術により、予測し、水害の防災・減災に貢献いたします。今後より良い世界に貢献する社会価値を創造することでお客様とともに持続的な成長を実現いたします。

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